地域運営校 茨城県内5割超 「課題解決の場」期待
学校と地域が連携して子どもたちの教育を支える「コミュニティースクール(CS)」が茨城県内公立校に広がってきた。住民と一体となって特色ある学校づくりを進める。国が2017年に公立校での設置を努力義務化したことで広がり、県内の設置率は本年度で5割を超えた。識者は「地域課題を解決する場」として、役割や可能性に期待する。 CSは学校運営協議会を設置する公立校を指す。会議に参加する委員は地域住民や保護者、コーディネーター、有識者らで構成し、教育委員会が任命する。 主な役割は①校長がつくる学校運営基本方針の承認②学校運営への意見③教職員体制などへの意見-の三つだ。一定の権限を持ち、文部科学省は「地域の声を積極的に生かし、一体となって特色ある学校づくりを進める」と位置付ける。 CSは04年、国が地方教育行政法を改正して創設。その後、教育を通したまちづくりを進める一環として17年、CSの設置が教育委員会の努力義務となった。これを機に設置が広がり、同省によると、24年度(5月1日時点)の設置率は全国で約58%。茨城県は前年比16ポイント増の約55%と半数を超えた。 ■サポーター 同県取手市は22年度から順次設置し、3年目の24年度は市立小中学全20校で完了した。 久賀小(同市萱場)はSC設置して2年目。今年、学校活動を支える「久賀小応援サポーター(KOS)」を立ち上げた。地域住民や保護者がボランティアとして美化活動や授業補助、校外学習の付き添いに協力。KOSや協議会開催の調整はコーディネーターが担う。幸田裕子校長は「より充実した教育活動が可能になった。地域全体で子どもたちを育てる意識も高まってきたのではないか」と手応えを語る。 本年度は「防災」をテーマに、教育や地域防災の向上をテーマに議論してきた。同小は川に近い立地のため、幸田校長は「防災は地域と一緒に取り組まないと効果は出ない。学校と地域をつなぐテーマになる」と話す。 ■人材育成 CS導入を推進する石塚康英市教育長は「地域の力を生かすことが子どもたちのより良い成長につながる。子どもたちは将来、地域の担い手にもなれる」と人材育成に期待する。 同省の調査によると、県内では取手市を含め11市町が100%設置を達成した一方、全く設置していない自治体も見られる。取手市でCSの助言や支援をする同省CSマイスターの安斎宏之さん=福島県=はCSの在り方について「形骸化しているケースも見られ、委員の当事者意識を高めることが重要」と指摘する。 その上で「CSの大きな役割は人をつなぐこと。学校だけでなく地域の課題も解決するプラットフォームになれる」と必要性を強調する。
茨城新聞社