卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑、「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択
過去に東北大学が卓越研究員事業に採択された事例があることから、東洋経済は文科省に情報公開請求し、東北大学の卓越研究員事業への申請書を確認した。 その結果、2019年度と2020年度分に関して雇用条件の欄などに「東北大学テニュアトラック制度に基づく雇用」「学際研を活用した『東北大学版テニュアトラック制度』により卓越研究員を採用する」などの記載があった。 そのため、東北大学に対して、「卓越研究員事業の申請書にある東北大学テニュアトラック制度は、本来のテニュアトラック制度ではないため、卓越研究員事業の採択要件を満たしていないのではないか」と質問したところ、「文科省の示す要件に基づき申請を行い、審査の結果、採択されている」(広報室)と文書で回答があった。
2019年度や2020年度と、小谷理事が東洋経済のインタビューに応じた2023年秋では、同じ東北大学テニュアトラック制度でも中身が違うとでもいうのだろうか。 ■東北大の若手研究者が文科省に告発メール 実は2019年当時、東北大学の学際研に所属していた複数の若手研究者が、文科省の人材政策課人材政策推進室に対し、東北大学テニュアトラック制度が名ばかりのもので、ほとんどテニュアになれないことや、それにもかかわらず卓越研究員事業に申請していることを告発する内部通報のメールを送っていた。
東洋経済は今回、その際のメールのやり取りを入手した。 それによると、人材政策推進室の担当者は、「東北大学に確認しましたが、東北大学のテニュアトラック制度のスキームとして、(中略)あらかじめテニュアポストの確保は行っているとのことでした」などと内部通報者に返信していた。文科省としては東北大学の説明を受け入れ、「東北大学テニュアトラック制度には問題はない」と結論づけていた。 だが、前述のように2023年秋の東洋経済の取材に対し小谷理事は、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではない」と明言している。口頭だけでなく、文書でも「本(東北大学テニュアトラック)制度は、予めテニュアポジションが用意された採用ではない」と記している。