【米大統領選2024】10州で中絶権の保護・拡大を求める住民投票、結果さまざま
アメリカの10州で5日、大統領選や連邦議会選と共に、女性の人工妊娠中絶の権利を保護あるいは拡大する政策の可否をめぐる住民投票が行われた。注目されていたフロリダ州では、中絶権の保護を復活させる手続きが否決された。一方、6州で中絶権を支持する政策が可決された。 アメリカの連邦最高裁判所は2022年、中絶手術を受ける権利を全米に保障した1973年の重要判例「ロー対ウェイド」判決を覆し、その可否の決定権を各州に戻した。この決定を受け、多くの州が中絶の禁止や厳しい制限を導入し、中絶を受けられない女性が増加した。 現在、各州で検討されているほとんどの施策は、胎児が一般的に生存可能になる妊娠24週目までか、女性の健康が危険にさらされる場合にはそれ以降も、中絶を認めるよう求める内容になっている。 ■大統領選でも主要争点に 今回の大統領選は、「ロー対ウェイド」判決が覆されてから初めてのもので、中絶権も主要な争点の一つとなっていた。 最高裁の決定以降に行われた選挙ではこれまで、州レベルの投票動向を利用し、中絶権を回復または保護するキャンペーンが成功していた。そのため、カンザス州のような保守的な州でも、民主党を支持する有権者の動員に役立ったと評価されていた。 しかし、今回の選挙では、そうした因果関係はそれほど明確に作用しなかった。 フロリダ州の活動家たちは、妊娠6週目以降の妊娠中絶を限定的な例外を除いて禁止する厳格な州法を覆そうと、胎児が生存可能な妊娠約24週目まで中絶を認めるという修正案を出していた。 しかし、この修正案にロン・デサンティス州知事(共和党)は声高に反発。同知事は州の予算や人員を動員して、「反対」票を投じるよう有権者を説得した。 ロイター通信によると、開票率95%の時点で同州の修正案の支持率は57%と予測され、可決に必要な60%には至らなかった。 一方、「ロー対ウェイド」判決が覆った直後に中絶禁止法を制定したミズーリ州では、現行の中絶禁止法が覆された。同州では今回の大統領選において、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利する見込み。 トランプ候補が大統領時代に指名した最高裁判事3人は、「ロー対ウェイド」判決が覆された際に不可欠な役割を果たした。そのため、中絶の権利保護を懸念する人々は圧倒的に民主党のカマラ・ハリス候補を支持しているとみられていた。 ■6州で中絶権の保護・拡大が可決 アリゾナ州では、60%以上の有権者が、胎児が生存可能な状態に達するまで中絶の権利を保護する改正案を支持した。この改正案は、州の規則で現在認められている妊娠15週目という期限を、さらに延長するもの。 現在中絶が合法のメリーランド州とコロラド州では、中絶の権利を州憲法に明記する法案が承認された。 特にコロラド州では、この改正によって中絶処置へのアクセスが拡大され、政府の医療保険プランで中絶費用がカバーされるようになるという。 ネヴァダ州でも、州憲法に中絶の権利を明記する法案が住民投票で承認された。現行の規定では、母親の命を保護する例外を除き、妊娠24週目まで中絶が認められている。 改正案が施行されるには、2年以内に住民投票で過半数の賛成を得る必要がある。 ニューヨーク州では、胎児が生存可能な状態になるまで妊娠中絶は合法。同州では今回の投票で、妊娠や生殖に関する健康状態を理由にした差別を禁止する修正案が承認された。 モンタナ州では、現在合法とされている中絶権を州憲法に明記する法案が可決された。また、政府が医師や中絶を行う者を処罰することも禁じた。 ネブラスカ州では今回、2種類の法案が国民投票にかけられた。このうち現行の、近親姦やレイプ、妊婦の命を救う場合といったいくつかの例外を除き、妊娠12週目以降の中絶を禁止する州法を州憲法に明記する案が可決された。 一方、妊娠24週目まで、あるいは女性の健康が危険にさらされる場合にはそれ以降も中絶を認めると州憲法に記載するとする、中絶権の拡大案は否決された。 母親の生命に危険がある場合を除き中絶を禁止しているサウスダコタ州でも、権利を認め州憲法に明記する案が提出されたが、否決された。 (英語記事 Six states expand abortion protections as Florida ballot fails/ The 10 US states with abortion questions on the ballot)
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