ビデオ通話で偽の逮捕状や警察手帳を示すケースも 警察官名乗る手口最多 広島県内 おれおれ詐欺被害が急増
息子や警察官になりすまして電話をかけ、現金をだまし取る「おれおれ詐欺」の被害が広島県内で急増している。1~9月は28件2億1831万円、10月は福山市で約1億4千万円の被害が判明した。年間被害額は既に3億5千万円を超え、過去最悪のペース。交流サイト(SNS)のビデオ通話で偽の警察手帳を示すなど手口が巧妙化している。 【特殊詐欺掲示板 発生地域や手口】はこちら 県警によると、年間被害額は2007年の3億7778万円(183件)が最悪。今年1~9月の28件のうち、犯人が名乗ったのは 警察官が20件で最多だった。息子や総務省職員をかたるケースもあった。 警察官を名乗る手口では警視庁など主に県外の組織を装い、自宅や携帯電話に電話。「あなた名義の口座が犯罪に利用されている」「逮捕される」などと告げ、「資金の動きを確認したい」「保釈金を支払えば逮捕されない」と振り込みなどを要求。ビデオ通話で偽の逮捕状や警察手帳を示された被害者もいる。 福山市で60代女性が約1億4千万円分の暗号資産(仮想通貨)を詐取された事件でも、警察官役の男がLINE(ライン)のビデオ通話で警察手帳のような物を示した。 おれおれ詐欺が社会問題化した03年ごろは息子や孫を名乗り、固定電話にかけるのが主流だった。太田貴之・減らそう犯罪情報官は「警察官をかたる手口も以前からあるが、相手を信じさせる手法が変わった」と強調。かつては高齢者が主な標的だったが、幅広い世代が狙われているという。 立正大の小宮信夫教授(犯罪学)はSNS型投資詐欺も横行する中、詐欺で金を得ようとする人が増えたとし、おれおれ詐欺は「経験や組織が十分なくても手が出せるのが増加の要因」とみる。 架空料金請求や還付金詐欺を含む特殊詐欺の1~9月の被害は4億1421万円(181件)。おれおれ詐欺が半数を超す。太田情報官は全国でも同様の傾向にあるとし、「警察官が逮捕すると電話したり、保釈金などと言ってお金を要求したりすることはない。不審な電話があれば警察に相談してほしい」と呼びかける。詐欺グループが首都圏の連続強盗事件に関与した疑いも一部で指摘されている。
中国新聞社