スタメン落ち屈辱を4打点大爆発に変えたソフトB松田の「悔しさがなくなったら辞めるとき」の哲学
試合後は蘇った熱男がヒーローインタビューに呼ばれた。 楽天とのCSファーストステージの2、3戦でスタメンを外された。インタビュアーにその心境について聞かれ、「ファーストステージは、少しベンチで見ることが多かったんですが、みんなが勝つために必死にプレーしていた。きょうから出させてもらい、必死にやろうと思っていた。うちは、いい選手がたくさんいるので結果を出さないと試合には出られない。また明日からも死に物狂いでバットを振っていきたい」と、いつもの元気満点の“マッチ節”ではなく、あくまでも淡々とどこか神妙にそう語った。 昨年もCSでスタメン落ちの屈辱を味わった。 オフになって松田に、その際の心境を聞いたことがある。 「そりゃ悔しいですよ。短期決戦だから調子が悪い奴は使えないという方針もわかる。でもね。正直、そうは割り切れない。僕は、プロとして悔しさがなくなったときが、辞めるときだと思っているんで」 悔しさをプライドという言葉に置き換えた。その気持ちがなくなったときは引退を決意するときだとまで言う。それが松田を支えている哲学である。 スタメンを外れたファーストステージの2試合も腐ることなくベンチの一番前に座っていつものように声を張り上げた。それは去年も貫いていた姿勢だった。 松田は、こうも語っていた。 「もう35歳。若い選手が背中を見ています。松田さんは試合に出ているときだけ元気を出して、出れないのなら腐るのか、と思われては、チームに悪い影響を与えてしまう。こういうときこそ、学んできたことの見せどころ。人間を試されるときなんです」 だから工藤監督が絶賛するほど声を出し続けた。 1勝1敗のタイにできたことで、第2戦には、武田を先発に立てることになった。もし負けていれば、千賀を中4日で背水のマウンドに送るプランだったという。 「初戦に勝つことができた。明日勝てば、勝ち越せる。みんなで勝ちにこだわって、ホークスらしい元気はつらつとしたプレーをしますよ」 チームリーダーの松田は、そう約束した。 辻監督に悔し涙を流させた昨年のCSファイナルステージも初戦の勝利でソフトバンクが勢いづいた。リベンジに燃える西武も、このまま簡単には終わらないだろう。だが、熱男の復活はソフトバンクにとって2年連続の“下剋上”を完遂させるための大きな材料になる。