ドイツで「氷上の格闘技」に挑む福岡出身17歳の双子「日本かドイツの代表で五輪に…」「将来はプロに…」夢とパックを追う日々
激しくスピーディーなプレーから「氷上の格闘技」と呼ばれるアイスホッケー。福岡で生まれ育った双子の高校生が、親元を離れてドイツで練習に打ち込んでいる。ドイツ人の父と日本人の母を持つイバッハ・ダニエルと妹のフィオナ。17歳の2人の目標はプロ最高峰のリーグでプレーし、世界を舞台に活躍することだ。(山崎清文) ■九州ゆかり女性アスリートの〝あの頃〟【秘蔵写真集】 硬質ゴム製のパックが時速170キロ近いスピードで飛び交い、防具を装着していても負傷が絶えないスポーツ。ポジションはともに最前線で攻撃を担うフォワードだ。「小さいころに合気道の経験があり、格闘技が好きだった」とダニエル。フィオナも「激しいスポーツの方が楽しいし、自分に合っている」と話す。 ▼競技との出会い 幼少時から家族と福岡市内のリンクで滑っていた。ダニエルは小学5年の2017年、同市のジュニアチーム「福岡香椎ヒリューズ」の笹野敏行代表(66)に誘われてアイスホッケーを始め、フィギュアスケートをしていたフィオナも1年後にチームに加入した。ともにすぐ主軸となり、19年には地方大会の優勝に貢献。笹野代表は「負けん気が強く、互いにライバル心を抱いて頑張っていた」と振り返る。 ▼転機 22年春、同市の友泉中を卒業した2人は東京の通信制高校に進み、父アンドレアスさん(54)の母国へアイスホッケー留学する道を選ぶ。「より良い環境で競技を続けたかった。北海道などの強豪校への進学も考えたが、福岡を出るのは日本でも海外でも同じ。それなら一緒にドイツに行こうと」(フィオナ)。北米と並んでアイスホッケーが盛んな欧州の中でも、ドイツは競技レベルが高く、選手層も厚い。それでも「もっと強くなりたい。もっと速くなりたい」という情熱が一致。両親も快く決断を後押ししてくれた。 ▼練習と課題に取り組む日々 今季は同国南西部マンハイムのアパートに2人で暮らす。ダニエルは育成リーグDNL3部U20(20歳未満)の「マンハイマーERC U20」に所属。フィオナは女子トップリーグDFELの強豪「マンハイム・マッドドッグズ」でプロに交じってプレーし、18歳未満のドイツ代表にも抜擢された。「全力でパックに向かう妹のパワーは男子並み」「兄はホッケーに対する意欲がすごい」とお互いを評価する。 1日約7時間に及ぶトレーニングの傍ら、高校の課題にも追われる毎日。炊事や洗濯などの家事は交代制で、仲良く助け合っている。「ささいなことでけんかもするんですけどね」とフィオナはいたずらっぽく笑った。 ▼夢に向かって 既にプロリーグで活躍するフィオナは「日本かドイツどちらかの正代表に選ばれて、世界選手権や五輪に出場したい」。一方のダニエルは「19歳までに上のチームに上がりたい。将来は自分もプロに」と、一歩ずつキャリアを積む考えだ。福岡出身の兄と妹が世界のリンクを舞台に、夢とパックを追いかける。
西日本新聞社