受刑者に「さん」付け、刑務官の「先生」呼びやめ号令行進も廃止…社会復帰重視で刑務所改革進む
同省は3月から、府中を含む16か所の刑務所で、号令に合わせた行進の廃止を試行。大きなトラブルはなかったとして全ての刑事施設174か所で今年度中に廃止することを決めた。
このほかにも、今年2月から、ガリ(散髪)などの隠語を廃止。4月からは、全受刑者を「さん」付けで呼ぶなど言葉遣いも改めた。今後は「余暇時間中に室内の壁にもたれない」といった処遇も見直しを検討している。
同省幹部は「集団を管理する上で必要最低限の動作は残すが、社会復帰を重視する考え方を踏まえ、実社会では行わないようなものは見直す」と話す。
トラブルリスク
処遇の見直しにあたって、規律秩序とのバランスをどう図るかが課題となる。
全国の刑事施設に収容されている受刑者は22年末時点で約4万人。集団での管理が求められる中、規律が緩みすぎると、受刑者がケンカなどのトラブルを起こしたり、逃走を図ったりするリスクも生じかねない。
中島学・福山大教授(刑事政策)は「拘禁刑の下で再犯防止や更生を促すためには、社会復帰後の自立を見据えることが必要で、より社会に近い環境で処遇することが大切」と指摘。「規律秩序を保つことは極めて重要で、受刑者の性格や年齢など特性に応じて緩和の程度に差をつける工夫も必要だ」と話している。
◆拘禁刑=更生のために必要な作業をさせたり、指導を行ったりする刑。従来の「懲らしめ」ではなく「立ち直り」を重視し、懲役刑と禁錮刑は廃止される。