「知事の資質」「政策は」 兵庫知事選の主な候補者アンケートと回答
17日に投開票される兵庫県知事選の主な候補者に、前知事らの内部告発文書問題への対応や訴えたい政策などについてアンケートしました。回答を紹介します。(届け出順、150文字以内の自由記述を原則そのまま掲載) 【写真】兵庫県知事選のポスター掲示場=神戸市中央区 ■設問(1) 兵庫県政で起きた内部告発文書問題をめぐり、公益通報制度を踏まえた前知事の対応について、問題があったと思いますか、なかったと思いますか。 ■清水貴之氏 「あった」 知事の職責を考えれば法的な問題の有無にかかわらず、内部調査ではなく、まずは第三者による調査を行うといった対応を検討するなど客観的な視点が必要であり、懲戒処分の時期についても慎重に判断すべきだった。初期対応を誤らなければ元県民局長が亡くなるという重大な結果は防げたはずで、知事の責任は重大だと考える。 ■稲村和美氏 「あった」 自らの疑惑が記載された告発文書について、事実解明より告発者捜しと告発者の処分を優先させたことは不適切な対応だった。また、第三者委員会の設置に消極的だったことに加え、自らのこれまでの組織マネジメントのあり方に向き合った十分な説明責任を果たしておらず、県政への信頼を失墜させた責任は大きいため。 ■斎藤元彦氏 「どちらとも言えない」 文書問題をめぐる対応については、一つひとつの局面や状況で、公益通報制度や法的な観点などからも、取り得る最善の対応をしてきたと考えています。ただし、結果として、県政の現状、不信任決議が可決されたことに対する責任については、真摯(しんし)に受け止めなければならないと考えています。 ■大沢芳清氏 「あった」 最初から告発者捜し・告発者つぶしを行ったことは、公益通報者保護法に違反する重大な人権侵害。告発文書は基本的に事実にもとづくものであることは明らか。百条委の調査、職員アンケートの結果が出ても、県議会で不信任の結論が出ても、前知事と幹部は真摯な反省をしていない。 ■設問(2) 兵庫県議会は全会一致で不信任決議を可決し、前知事に対して「資質を欠いていると言わざるを得ない」と指摘しました。あなたが考える「知事に求められる資質」とは何でしょうか。 ■清水貴之氏 今の混乱した県政においては、特にコミュニケーション能力が重要だ。課題に対する改革を立案し、それを迅速に実行するためには、県議会との協力体制の構築が必須。職員や県民など現場の声を真摯に聞き、まとめ上げ、意思決定に繫(つな)げていくというボトムアップ型の県政運営を実現していく調整力が求められている、と考える。 ■稲村和美氏 選挙で選ばれるからこそ、公僕として自らのおごりを戒め公権力を預かる者としての自覚と責任を持つこと。批判や反対の意見にも真摯に向き合い、説明責任を果たして信頼関係を構築する対話力。時代の変化に対応した改革への信念とともに多様な意見を踏まえ、必要に応じて取り組み内容を改善しながら推進するバランス感覚。 ■斎藤元彦氏 県知事は、県民の皆様から直接選挙によって選ばれています。県民の皆様にとって、よりよい施策や事業を行っていくことが重要です。正解が一つとは限らない社会の中で、明確なビジョンを示し、それを具体的に事業や予算化していく政策立案力が重要です。 ■大沢芳清氏 自由な発言を保障して、県民のために職員の力を引き出すリーダーシップを発揮すること。リーダーが部下に積極的に関わり、意見に耳を傾け、そのうえで組織の進むべき方向を指し示すこと。サーバントリーダーシップが必要。 ■設問(3) あなたが1丁目1番地に掲げる政策は何ですか。 ■清水貴之氏 観光経済政策。2022年度、県の観光客数は1億1450万人だったが、このうち90.5%が宿泊を伴わない日帰り観光。観光客数を1億5千万人まで増やし、宿泊を伴う観光客の割合を20%まで引き上げ、5千億円規模の地元経済効果を創出する。人口流出を食い止め、住みやすさや幸福度の高い地域、日本一のウェルビーイングを実現したい。 ■稲村和美氏 県政への信頼回復と再発防止。継続中の調査への全面協力と、今回の文書問題にかかる県の一連の対応についての検証と見直し。公益通報制度をより信頼性の高い仕組みに抜本改善。知事や議員も対象とするハラスメント防止条例の制定。知事の顔色ではなく、県民の方を向いて仕事をする職員が評価される人事・評価制度の導入。 ■斎藤元彦氏 少子化の時代だからこそ、若い世代への支援策が重要です。県政改革を推進し、大学無償化、奨学金返済支援策、不妊治療支援など若者を直接支援する政策を増やしていきます。施策への実感を通じ、若い世代の皆さんの社会や政治に対する関心や参画、主権者としての意識の醸成につなげていきたいと考えています。 ■大沢芳清氏 18歳まで医療費窓口負担無料化、学校給食無料化などの子育て環境の充実と医療・福祉の充実。県内どこでも安心して暮らすために県が責任をもつこと。これらを県が担えば、市町は地域ごとに違う教育、福祉、地域交通など県民が安心して暮らせるための施策を充実することが可能になり県民のくらしを下支えできる。 ■設問(4) 老朽化した県庁舎について、建て替えの是非を含めて、どのように対応すべきでしょうか。 ■清水貴之氏 県庁舎の建て替えは必要。現庁舎には耐震性の問題があるうえ、南海トラフ地震や豪雨対策など、防災減災対策面で県庁の司令塔としての機能が不足しており、再整備が必要だ。ただし、建設費には十分に配慮し、民間の知恵を借りつつ神戸市などと連携し、元町・三宮エリアを一体化して、人が行き交う活気ある地域を目指したい。 ■稲村和美氏 県庁舎は華美な施設である必要はありませんが、大規模災害時において災害対応の拠点になります。建設費用の抑制、県有公共施設の総床面積の縮減を前提に、防災拠点機能を有する県庁舎を整備します。また、元町地区のまちづくりにも影響があることから、整備にあたっては、街づくりの観点から神戸市とも連携します。 ■斎藤元彦氏 1千億円を超える事業費になる前計画を凍結したことは、県財政への影響を考えると、正しい判断だったと考えています。現在開催している有識者会議の議論を踏まえ、防災機能を有し、ペーパーレス、フリーアドレス、在宅勤務など新しい時代の働き方を踏まえたコンパクトな県庁舎の建て替えを目指します。 ■大沢芳清氏 建て替え計画なしに、4割出勤・テレワークを前提に、まず庁舎の解体・撤去を進める計画は無責任。建て替えで新庁舎建設は必要。いまの規模程度を確保して、合理的・機能的な庁舎建設を進める。職員、県民の意見をよく聞いて、建て替え計画を進める。 ■設問(5) 前知事時代に始まった兵庫県立大学の授業料無償化について、賛成ですか、反対ですか。 ■清水貴之氏 「どちらとも言えない」 高等教育の無償化を進めることには賛成だが、県立大学のみの無償化については、多くの懸念や疑問の声が寄せられている。なぜそのような声が出ているのか、様々な意見を伺いながら、教育の実質無償化をどのように進めていくのか、皆が納得できる解決策を模索していきたいと考える。 ■稲村和美氏 「反対」 兵庫県立大学の学生のみ無償化にする現行制度は、対象者が県内の高校卒業生の約1.7%という限られた若者にしか恩恵がない不公平な制度です。現在の制度対象となっている人に不利益が生じないようにすることを前提に制度を見直し、県立大学の学生も含む、より多くの若者が対象となる大学授業料の支援制度を創設します。 ■斎藤元彦氏 「賛成」 3人に1人の学生が平均300万円の奨学金を受給しながら大学などを卒業している現状です。高等教育の負担軽減策は若者支援施策として最重要です。まず、国に先駆けて、県立大の授業料等無償化を着実に進めていきます。あわせて、奨学金返済支援制度の拡充により、県立大以外の学生に対する支援も充実させていきます。 ■大沢芳清氏 「賛成」 高等教育の無償化は世界の流れ。国に責任があるが、県ができることとして、県立大学は県内在住学生に限らず全員の授業料無償化に拡充する。県内の学生全体を支援するため、県として給付制奨学金制度を創設。私学助成を法律通り経常経費5割になるよう、増額を国に求める。 ■兵庫県知事選の候補者一覧 清水 貴之 50 無新 〈元〉参院議員 稲村 和美 52 無新 〈元〉尼崎市長 斎藤 元彦 47 無前(1)〈元〉大阪府課長 大沢 芳清 61 無新 医療生協病院長〈共〉 福本 繁幸 58 無新 音楽会社経営 立花 孝志 57 無新 N国党首 木島 洋嗣 49 無新 情報分析会社長 (届け出順、年齢は投票日現在、〈〉内政党は推薦、丸数字は当選回数)
朝日新聞社