全国自治体が移住受け入れアピール 大阪で「いなか暮らしフェア」
「移住したら古民家を再生しみんなが住めるようにしたい」
来場者に話を聞いた。30代の女性看護師は同僚とふたりで訪れた。「満員電車に揺られて職場に通う毎日」に疲れて、「いなかでのんびり暮らせたら」と思い始めているという。隣で同僚もうなずく。看護師は求人の多い専門職だから、移住先の地方でも仕事は見つかりそうだ。 「暖かいところがいいかなと思い」、西日本のブースを中心に回ったが、移住に向けた具体的な計画はいまのところ立てていない。いなか暮らしを夢見るひとときそのものが、多忙な日々をやり過ごす張り合いになっているのかもしれない。 奈良県の40代は建築系の職人で、「一人親方」でバリバリ仕事をこなす。「うまい水が飲めるいなか」を探して移住したいという。移住先はとくに限定しないが、できれば海あり山ありがいい。「住む人がいなくなって廃棄されそうになっている民家を譲り受けて、自分自身で大工仕事で手を入れて新しい生活を始めたい」と、古民家再生に自信を示す。 ブースを回るうちに、住まいの確保が、受け入れ自治体と移住希望者の双方にとって、大きな問題になっていることに気づく。「僕が移り住む家の他にも古い空き家があれば、僕が手直しすることで人が住めるようにしたい。大工の仕事を通じて、移住者にも地域の皆さんにも喜んでもらえるなら、これほど幸せなことはない」と、新天地での新しい生き方をつかみかけたようだ。看護師や大工など日々の暮らしを支える専門職の移住は、受け入れる地域にとっても頼もしい限りだろう。
「息子の成長」のため「来年夏までに移住する」
会場内では、若い家族連れの姿が目立ち、親子揃ってブースのカウンターに座り、担当スタッフと熱心に話し込む情景が数多く見受けられた。妻や8歳の長男と訪れた大阪府在住の30代男性は「都会は便利だが、便利すぎる。息子が自然の中でのびのびと暮らしながら自立した大人に育つよう、いなかへ引っ越したい」と、長男の将来のために移住を決意したという。 すでに向こう8年先までの長期的な人生計画を立案。第1段階として、移住先でも仕事を見つけやすいよう、介護関連職の資格を取得したうえで、「来年夏までに移住を決めたい」と意気込む。「移住まで1年」のカウントダウンが始まったわけだ。 心地よいいなか暮らしにあこがれる、意を決して移住の準備を進める。来場者の心もようはさまざまだが、いなか暮らしが一定の流れを形成しつつあることは間違いなさそうだ。移住に関する詳しい情報は大阪ふるさと暮らし情報センターの公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)