「男らしさ女らしさ」って? “男の娘”マンガの作者と声優が葛藤した「100%の表現」
2022年の「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位のwebtoon作品『先輩はおとこのこ』(作:ぽむ/「LINEマンガ」オリジナル)が、7月4日よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにてアニメ放送される。主人公はロングヘアのウィッグをかぶり、女子生徒用のセーラー服を着て学校生活を送る男子高校生・まこと。彼を取り巻く友人たちとの友情と純愛、周囲の人々との葛藤を瑞々しく繊細に描き、多くの共感を得ている作品だ。「男らしさ、女らしさ」よりも「自分らしさ」が尊重される社会。そんな理想が掲げられながらも、さまざまな偏見の目線もある現代にこの作品が届けたものとは? 原作者のぽむ先生、まことを演じる声優・梅田修一朗さんに語り合ってもらった。 【漫画】アニメ化で話題!セーラー服の“男の娘”が可愛すぎな『先輩はおとこのこ』
■実感なかったアニメ化、梅田さんの声を聞いて「あ、まことだ」と思った
──多くの熱望を受けていよいよアニメ放送を控えた今のお気持ちを伺えますか? 【ぽむ先生】(アニメ化の)お話をいただいた時は現実感がなかったんですが、キャストさんが決まったり、PVが完成したりするうちに少しずつ「本当なんだな」という気持ちになってきました。何より音の力ってすごいなと思いましたね。マンガを描いてるときは、まったく音を意識していなかったので。 ──描きながら登場人物の声をイメージしたりは? 【ぽむ先生】特になかったんです。梅田さんの(キャストオーディションの)サンプルの声を聞かせていただいて、初めて「あ、まことだ」ってわかりました。だからよけい音の力、声優さんってすごいなって思ったんです。 【梅田修一朗】よかった……。『先輩はおとこのこ』という作品と出会ったのは、連載開始前だったんですかね。たまたまXに流れてきた4コマのイラストを目にして「綺麗な絵だな」と思ったのが最初でした。それからマンガも読んで大好きになって、声優としてはもちろんですが、僕個人としてまこと先輩という人物に寄り添いたいという思いにもなっていたので、生みの親であるぽむ先生にそう言っていただけたことが何よりうれしいです。 【ぽむ先生】読者さんの中には、まことの声をもっと高いトーンで想像していた方もいたと思うんです。だけど私の中では低すぎるわけじゃないけど、最初聞いたときに見た目に対して違和感がある感じのイメージ。そこからまことを知るうちに、少しずつ馴染んでいくくらいの塩梅がいいなと思ってました。具体的にどんな声という明確なイメージはなかったんですけど…。 【梅田修一朗】オーディション用の声を吹き込むときは最後まで悩みました。可愛い見た目だからといって可愛い声とかしゃべり方というのは違うなと思っていて、でもやっぱりまこと先輩の中の「可愛くありたい」という気持ちにも寄り添いたくて。それを声で表現する上で何が正解なのか──。性別ではなくまこと先輩という存在の声をずっと考えながら、「これでよかったのかな」って確信もないままオーディションテープを提出したんですけど。 【ぽむ先生】そのお話を聞いて、改めて「梅田さんでよかった」って思いました。私もこの作品は最後まで「何が正しいんだろう」って揺れ動いていたので。結局はこの子たちのことを真剣に考えることが大事なのかなと思って描いてきたんですけど、梅田さんが同じような思いでまことに向き合ってくれていることがうれしいです。 【梅田修一朗】アフレコが始まってからも「果たして僕は100%、まこと先輩を演じられているだろうか?」と考えてしまうことはあります。でもぽむ先生のおっしゃる通り、僕自身の葛藤がまこと先輩を形作るのにもどこか重なっていればいいのかもしれない。そんな願いを込めながらアフレコに臨んでいます。