南海トラフ巨大地震は「連発」する…日本人が絶対に知っておきたい「後発地震の恐怖」
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
「後発地震」に備えながらの救助活動
最大震度7、津波高が最大30メートル超にも達する史上最大級の南海トラフ巨大地震が襲来すれば、救援活動も容易ではない。 震度6弱以上または浸水深30センチ以上の浸水面積が10ヘクタール以上となる市区町村は、30都府県の737市区町村と超広域で被害が生じることに加え、時間差で起きる可能性がある「後発地震」に消防などが備えなければならないからだ。 一度の巨大地震発生であれば被災地に応援部隊が一斉に向かうことができるが、南海トラフ巨大地震の場合は「後発」を警戒して地元での活動にとどまることを余儀なくされる。 政府は被災地域で「自活のため最低でも3日間、可能な限り1週間分程度の備えなどへの理解を進めることにも取り組む」とするが、巨大地震の連発によって被災地の救援・救助に遅れが生じる可能性は捨てきれない。 関西大学の永田尚三教授(消防・防災行政)は「究極の事態では地域住民を守ることが最優先される。被害が少なくても、後発地震が起きるかもしれないという不確実な状況では、応援派遣できるかどうかは究極の選択を迫られる。できることには限りがあり、優先順位をつけなければならない」と語る。
事前避難の重要性
一度目の激しい揺れに耐えた建物でも時間差で再び巨大地震に襲われれば、倒壊するリスクも高まる。現在の設計基準は「連発」を想定していないためだ。 何とか避難して安心をつかんだと思っても、そのダメージから回復し切れていないときに二度目の大地震が襲うという信じられないことが現実に起こり得る。 政府は「半割れ」を想定し、2019年から「南海トラフ地震臨時情報」という防災情報の運用を始めた。南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合や地震発生の可能性が高まっていると評価した際に気象庁が発表するもので、テレビやラジオ、インターネット、防災行政無線などで伝達する。 「巨大地震警戒」と発した場合にはすぐに避難できる準備を呼びかけ、発生後の避難では間に合わない可能性がある住民は1週間の事前避難を行う必要があるとしている。 2016年版の「消防白書」によると、この年の4月14日と同16日に震度7を観測した熊本地震で地震の直接的な影響による死者50人、建物全壊8000棟超に達した。 ただ、一度目(M6.5)の揺れで4万4000人を超える住民が約500ヵ所の避難所に避難したため、約28時間後に起きた二度目(M7.3)の犠牲者を抑えることにつながったとされる。 早期避難に対応していなければ、二度目の強い揺れで倒壊した建物被害に巻き込まれるなどして死者が10倍以上に膨らんでいた可能性があるという。 国内観測史上最大のMw9.0を観測した2011年3月の東北地方太平洋沖地震は、本震の2日前にM7.3の地震が発生。約1ヵ月後にはM7級の余震が発生し、復旧の遅れにつながった。時間差で連続発生し得る南海トラフ巨大地震では、建物や地盤の崩壊、液状化による被害拡大・二次災害なども懸念されている。 政府は2024年春までに被害想定の死者数を8割減らす減災目標を掲げるが、達成は困難だ。国力を大きくダウンさせる巨大地震の到来を前に、我が国は人口減少・超高齢社会を迎え、財政力が弱い「過疎地域」も2022年4月時点で885市町村に上っている。今や全国の自治体の半分は過疎化の悩みも加わっているのだ。 南海トラフ巨大地震で甚大な被害が想定されている高知や徳島、和歌山も例外ではなく、ハード対策や隣近所との助け合いに不安を抱える。東側と西側で巨大地震が連発したとき、日本は「動ける国」であるのか。 被害を最小限に食い止めるカギは、やはり一人ひとりの避難準備と行動が握っているのは間違いない。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)