虎のソナタ 雨男記者の「親孝行・ストーリーは突然に」 あの日、あの時、あの場所では雨天中止…
(セ・リーグ、阪神2-5DeNA、10回戦、阪神5勝4敗1分、22日、甲子園)雨雲の動き…1時間後、2時間後…。あぁ…いや、いけるか。今春入社したばかりの萩原(はぎはら)翔は鳴尾浜で2軍選手を取材しながら、スマートフォンで天気予報をチェックしていた。 エライ! スポーツ新聞の記者は天気に詳しくないと駄目だ。もちろん、取材関係者から「きょうの天気はどう?」と聞かれることはよくあるし「試合できそう?」なんて、決定権がない記者に聞いてくる人もいる。そもそも試合があるかないかで取材の方向性も変わってくる。だから、朝起きると、まずテレビをつけてお天気コーナーをハシゴ。そのうち気圧配置図を見ただけで、簡単な予想はできるようになる。 「いや、そうじゃないんですよ」と萩原。「実はきょう両親を甲子園に招待していまして…」。バックネット裏のTOSHIBAシートに萩原の父・隆史さん、母・雅美さんが奈良・登美ヶ丘からきているというのだ。 もともと、この日のチケットを持っていた知人がいけなくなり、萩原が買い取ったことで「親孝行・ストーリーは突然に」が始まった。親御さんは「お金を払うから」と言い続けていたらしいが「いいよ、いいよ」と息子はニコニコ。「初任給で何にも買ってあげていないですし、少しでも恩返しできれば、と思って。両親とも野球が好きなんで」。 とはいうものの、萩原には〝雨男〟だという自覚が少しあった。近大付高時代、甲子園で開催される阪神-オリックスの交流戦のチケットを手に入れた。初めてのライトスタンドだった。ところが、雨…。ずっと通路に潜り込んで、したたり落ちるしずくをニラんでいた。藤浪晋太郎(現米大リーグ、メッツ)が先発予定だったこともあり、ワクワク感は高まっていたが、最終的に中止となり、ガックリ。「開門したのでいけると思ったんですが」。この日のDeNA戦は途中から雨が降ってきたが、試合が成立。その心配は杞憂(きゆう)に終わった。 萩原のご両親はいつもサンスポを楽しみにしてくれているそうだ。「僕からは、あまり話さないのですが、見てくれているようで…。『○○選手に話を聞いたのか?』といわれるので、あ、読んだんだなと思ったり」。親というのはありがたい。小欄がピヨピヨの社会人だった頃は、わざわざスクラップ帳を買って、署名記事を集めてくれていた(今となっては…どこにあるのか、さっぱりわからん。捨てた?)。