東京都知事選挙を素材として考える「ニセ情報」の見抜き方
元大阪市長・大阪府知事で弁護士の橋下徹さんであれば、ビジネスパーソンの「お悩み」にどう応えるか。連載「橋下徹のビジネスリーダー問題解決ゼミナール」。今回のお題は「『ニセ情報』の見抜き方」です──。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、雑誌「プレジデント」(2024年7月19日号)の掲載記事を再編集したものです。 ■Question 大混乱の選挙戦からビジネスパーソンが学ぶべきポイントは? 2024年7月7日に東京都知事選挙が予定されています。野党の大物議員が立候補を表明するなど世間が騒がしくなってきましたが、こうした大型選挙では虚実さまざまな大量の情報が飛び交い、惑わされることもしばしばです。このような状況から、ビジネスパーソンが学ぶべきポイントは何でしょうか。
■Answer 出所はどこか? 信頼度を「5段階」で評価せよ やはり大型選挙になればなるほど、各陣営や支持者たちが、あることないことをネットに流すのが昨今の選挙戦術の柱になっています。何を言うか、あるいは何を言わないか……。都知事選挙ではすでに情報戦は始まっています。各種報道も言いたい放題。ネット空間でもこれからさまざまな予想・憶測が飛び交うはずです。 読者の皆さんは、これを機会に「情報強者」になる道を考えてみてはどうでしょう。実はこうした選挙は、都民としての一票を持っていなくても、情報の見抜き方を鍛えるうえでは格好のお手本になるからです。 というのも、いくらネット情報といえども、民間企業や一般人に関しては飛び交う情報もさほどひどいものにはなりません。「噂を流す人」も「範囲」も「流すネタ」もそう多くはない。下手に相手の信用を損なえば、名誉棄損で訴えられるリスクがあるからです。 ところが選挙となると、「表現の自由」が優先されます。政治家は一般人とは異なり公を代表する公人です。その公人に関する情報発信は、本人の名誉より尊重されると考えられているので、政治家はよほどのことがない限り何を言われても、基本的に耐えるしかありません。 そんな政治家同士が競う選挙となれば、凄まじい情報合戦に発展します。日本に限らずアメリカなど世界中の大型選挙でも情報は大氾濫します。 だから中国やロシアなどは、言論の自由を極端に狭め、厳しい情報統制を敷くんです。彼らにとっては個人の「表現の自由」より、社会の「統制」のほうがよほど大事だからです。 僕はもちろん「表現の自由」が尊重される社会こそ望ましいと思っています。でも、その場合は個々人がしっかり「情報の取捨選択」をできる力を身に付ける必要があります。 大量のフェイクニュースが飛び交う昨今、「正しい情報」だけを選び取り、「フェイク」には一切触れないようにするのは不可能です。「フェイク」を含めた玉石混交の情報に触れつつ、そこからなるべく正しい情報、得るべき知識をつかみ取るしかありません。 そこでお勧めなのが「情報の信頼度」を見分けるテクニックです。僕が実際に活用している「情報のランク分け(5段階評価)」をご紹介しましょう。 まず、信用すべき「信頼度5」は、内閣府発表や各省庁発表、国連やOECD発表など、あらゆる報道の元ネタとなるデータベースや公的発表です。各専門家が厳密なデータを交え、かつ幾重にもチェックが入っている情報は、憶測や噂が入り込む余地がほとんどありません。 「信頼度4」は全国紙など新聞が取材し、裏を取った情報です。特に1~3面あたりに載る「情報」は信頼に足ります。ただ、新聞でもコラムや論説、社説は別ですよ。これらは書き手の意見や推察が込められているからです。 「信頼度3」はテレビの報道番組、「信頼度2」は書籍・雑誌・大手メディア以外のネットニュースやメルマガ。 「信頼度1」は人々の噂話やネット情報。これはほとんど信じるに値しません。興味を引く情報があれば、必ず「信頼度5」か「4」にアクセスして、裏を取ってください。 さて、これらを確認したうえで改めて東京都知事選の現段階を眺めてみると、信用に値する情報はほとんど何も出ていないことがわかるはずです。 これを書いている6月10日現在、信頼度5や4や3の情報で明らかになっているのは「立憲民主党の蓮舫さんが都知事選に出馬する」ことと、「小池百合子都知事が出馬するかは不明」の2点くらい。つまり皆さんが接しているその他のネット情報は、ほぼすべて根拠なき噂や意見だということです。