『ドラクエ2』ローレシアの王子はなぜ「じゅもん」を使えない? 「ロトの血が薄かった」説も
「ゲームバランス」以外の可能性とは
●血筋でも、素質を受け継ぐとは限らない…… 真面目に考えれば、呪文を使えない理由は先ほど述べた通り、ゲーム的な配慮とバランスに尽きるでしょう。しかし、そういった事情はあえて伏せ、「ロトの血を引いているのに呪文が使えない謎」をアレコレ考えるのも、ゲームを楽しむ方法のひとつでしょう。 そこで、説得力の高さはさておき、考えられるいくつかの可能性を探ってみました。そのひとつは、「才能の継承に偏りがあった」という仮説です。 確かにロトの血を引く子孫たちは、みな文武両道です。しかし、一族全員が魔法にも長けていたとは限りません。より濃く受け継いでいる人もいれば、影響が少ない人もいるはずです。もしかしたら、ローレシア家よりもサマルトリア家の方が、勇者の血統を色濃く受け継いだのかもしれません。 ちなみにサマルトリアの王子は、どっちつかずの器用貧乏というイメージもありますが、その成長は大器晩成型のため、最大レベルに近づくほど頼もしい存在となります。その成長曲線も、なんだか勇者っぽさを感じられるところです。 ●まさか、勇者の血を引いていない? 勇者の血を引いているのに呪文が使えない、と考えるから謎が深まるのかもしれません。もし仮に、ローレシアの王子が勇者の血を引いていなければ、呪文が使えないのも不思議な話ではないでしょう。 もちろん魔法は、勇者だけの特権ではありません。しかし、ロトの一族が魔法の素質に優れているのは、傾向を見れば明らかです。その血を引いてるのに……と考えるより、その血を引いてないから使えない、と考える方が自然かもしれません。 とはいえ、さすがに「ロトの一族じゃない」説は乱暴過ぎる意見といえます。呪文が使えなくとも、ロトの剣や鎧などはしっかり装備できるので、ローレシアの王子が勇者の血を引いているのはまず間違いなさそうです。この考察は、仮説にしても可能性は極めて低いでしょう。 ●自らの意志で呪文を諦め、戦士を極めた可能性 呪文を「使える・使えない」の2点のみで捉えるから、実態から遠ざかるのかもしれません。魔法を使いこなすには素質も重要ですが、十分な修練や学習も必要なはずです。そのためローレシアの王子は、使えるかどうかではなく、あえて呪文を学ばなかった可能性も考えられます。 戦う力が必要になった時、武術も魔術も共に役立ちます。しかし、このふたつはまったく別の技術です。よほど才能に恵まれ、そして努力を続けなければ、両立は叶わないでしょう。 強力な呪文を使いこなすムーンブルクの王女は、防御面や物理攻撃が大きく劣ります。魔法に特化した分、他は疎かになったと思われます。サマルトリアの王子は文武両道ですが、物理攻撃はローレシアの王子に叶わず、魔法ではムーンブルクの王女に及びません。 勇者の血を引いてるといっても、人間のため限界はあります。そこでローレシアの王子は、呪文を学ぶ道を諦めて武術に打ち込み、魔法は全く使えない一方で、優れた戦士として開花したのかもしれません。 ●時代を経て、勇者の血が衰えた可能性も? ここまではローレシアの王子自身に理由を求めてきました。一方、世代による影響という線も考えられます。まず、ゲーム上で血筋が最も古い『ドラクエ11』の勇者は、剣を使いこなし、呪文は攻撃・回復・蘇生など広く網羅しているオールラウンダーです。歴代主人公のなかでも、指折りの強さを持っている人物です。 次いで古い『ドラクエ3』の勇者も、ギガデインやアストロン、ベホマズン、トヘロスと、強力な呪文や作中で勇者しか使えない呪文などを複数覚えます。パーティの編成次第で、物理アタッカーからサポート役までこなせる、実に頼もしい存在です。 ところが、その次の『ドラクエ』の勇者は、最強の攻撃呪文がベギラマ、回復もベホイミ止まりです。ゲーム的に最も古い作品なので、シンプルなのは仕方のない話ですが、設定面だけ考えると、『ドラクエ11』→『ドラクエ3』→『ドラクエ』と代を経るごとに勇者の素養が弱まっているようにも見えます。 どれほど優れた血筋でも、代を重ねるたびに他の血が入り、純血から遠ざかっていくのは必然です。そして『ドラクエ2』は、ロト3部作の末期にあたる作品なので、歴代の勇者が持っていた「近距離の強さ」「文武を兼ね備える器用さ」「強力な呪文を使う能力」が、3家に分かれる形になってしまったのかもしれません。 * * * ローレシアの王子がなぜ、呪文を使えないのか。その疑問に絶対の正解を出さずとも、『ドラクエ2』は十分楽しめます。だからこそ、揚げ足取りという意図ではなく、アレコレと自由に考えて自分なりの答えを考える、ひとつの楽しみ方でしょう。そうした余白に、あなたも想いを馳せてみませんか。 Androidアプリ版『ドラゴンクエスト II』: (C)1987, 2014 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved スーパーファミコン版『ドラゴンクエスト I・II』: (C)1993 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
臥待