【解説】「真剣に考えて!」浄水場から目標値を大幅に超える化合物 町の対応の遅れに住民から厳しい声 岡山・吉備中央町
KSB瀬戸内海放送
岡山県吉備中央町の浄水場から目標値を大幅に超える有機フッ素化合物「PFOS」と「PFOA」が検出されていたことが10月、明らかになりました。 「PFOS」と「PFOA」は、コレステロール値の上昇や、発がんとの関連などが指摘されています。以前は消火剤や界面活性剤など、幅広く使われていましたが、現在は国内での製造や輸入が禁止されています。 全国でも高い値が検出される事例が相次いでいますが、吉備中央町の場合は、その対応の遅れに住民から厳しい声が挙がっています。 【写真】資材置き場で見つかった使用済みの活性炭が入った大型の袋
(吉備中央町/山本雅則 町長) 「対応が遅れたことを、まずもってお詫び申し上げます」 10月17日、町は円城浄水場の水から国の暫定目標値(50ng/L)を大幅に超える有機フッ素化合物「PFOS」と「PFOA」が検出されていたことを公表しました。 2022年10月の検査では目標値の28倍、2021年は24倍、2020年は16倍の数値が出ていました。 しかし、吉備中央町はいずれも県に報告するなどの対応をしていませんでした。 原因について、町は……。 (吉備中央町 水道課/歳原雅則 課長) 「水質基準必須51項目というのがあるんですけれど、そこには(PFOS・PFOAは)現在含まれていない。認識が不足していた部分がございます」 日本の水道水は、水道法に基づいて設定された51の「水質基準項目」をクリアすることが求められています。この51項目には、「大腸菌」や「ヒ素」「水銀」「鉛」「塩素酸」などがあります。 一方、「PFOS」と「PFOA」は「基準項目」ではなく、「水質管理上留意すべき項目」と位置づけられています。2020年にこの項目に加えられました。 現時点で身体に悪影響を及ぼす量などは分かっていないため、基準値ではなく暫定目標値が設定されています。 一方、どの程度超えれば飲料水・水道水としての使用を控えるのかなどの具体的な対応は定められていません。 吉備中央町は、暫定目標値を大幅に超えていることは認識していたものの、基準値ではないから……と10月まで飲料水としての使用を認めていました。 (吉備中央町/山本雅則 町長) 「これについては、認識不足で飲用していただいた期間があるというのは、大変申し訳なく思っております。これ以外の項目はすべてOKだったもので、これは水道水として『適』だと認識のもとでやっていたのが、少し認識が甘かった」 備前保健所から緊急対応の必要性を指摘された吉備中央町は10月16日、水道水としての供給は続けるものの、飲むことを控えるよう対象の約500世帯に呼び掛けました。 11月、町が開いた住民説明会。住民からは、町の姿勢を厳しく問う声が出ました。 (住民は―) 「真剣に考えて! 私たちのこと」 「町自体が機能不全を起こしていると感じています。できる限り(今後の会議などを)配信をしていただけるような仕組みがつくれないか」 11月10日には、有志の会が、血液検査などの健康診断を行うことや、2020年11月までさかのぼって水道料金を返還するよう求め、1038人分の署名を町長に提出しました。 (円城浄水場PFAS問題 有志の会/我妻瑛子さん) 「年配の方も、健康のため熱中症予防のため、水をたくさん飲んだ方がいいとお医者さんに言われてこの夏も飲んできたと……。(声が詰まる)なのにこんなことになってしまった」 (吉備中央町/山本雅則 町長) 「町としても、この思いをしっかりと受け止めたい。少しでも(住民が)安心できるような方向性をと思います」 吉備中央町は10月18日以降、円城浄水場の水源を、それまでの河平ダムから日山ダムに切り替えて水道水を提供しています。しかし、その水を飲むことは認めておらず、エリアの住民は、給水所などで飲み水を確保しています。 町は円城浄水場の活性炭を入れ替えるなどしてPFOS・PFOAの濃度を下げ、11月中に水道水を飲めるようにする方針です。 PFOS・PFOAの値が高かった原因を調べるため岡山県は、水源としている河平ダム周辺の22地点を調査しました。 調査の結果、新たな水源とした日山ダムの値は低かったものの、22地点中12地点で暫定目標値を超え、上流に行くほどその値が高くなりました。 調査した中で最も上流にある沢では、暫定目標値の1240倍にあたる1Lあたり6万2000ngが検出されました。最も高濃度を検出した沢から100mから200m北の地点には……。 (記者) 「道路脇の広くなった場所に、大きな袋がたくさん積まれています」 この資材置き場では、使用済みの活性炭が入ったフレコンバッグと呼ばれる大型の袋が約300個見つかりました。 岡山県が12個の中身を検査したところ、このうち1個から1Lあたり320ngが検出されました。 この土地は、県内の企業が借りていて、活性炭を再生して使うために15年ほど前から袋を置いていたということです。この企業によると、袋は最も多い時で約600個置かれていました。 以前は順次自社の工場に運ぶなどしていましたが、2016年以降は、約300個が野ざらしの状態だったということです。 県によると、最も数値が高かった沢から、資材置き場までの間に、発生源となりそうなものはありませんでした。また、この資材置き場より北の沢でも水質調査をしましたが、PFOS・PFOAはほとんど検出されませんでした。 岡山県は、円城浄水場の一連の問題との関連について、現段階では分からないとしています。今後、残りの袋の中身を検査するなどして、関連性を調べるとしています。 現在、袋は、この企業が撤去を進めています。 (岡山県 環境管理課/楠奥浩庸 課長) 「調査結果も(町に)提供して、その中でも専門家の意見も踏まえながら、原因究明に向けて町のサポートをしていければ」 一連の問題を巡っては、吉備中央町の住民から、農作物への風評被害を懸念する声が挙がっています。 これを受けて町は、円城浄水場の給水エリアの米と特産の白菜を検査し、いずれからも「PFOS」と「PFOA」が検出されなかったと発表しました。 町は17日、専門家や医師などの外部有識者による1回目の対策委員会を開いて対策を話し合うほか、11月22日には専門家を招いて健康への影響についての説明会を開く予定です。
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