【Playback箱根駅伝】第91回/青学大 史上最速の10時間50分切りで初V アオガク黄金期の幕開け
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの) 第91回箱根駅伝総合成績をチェック
第91回(2015年/平成27年) 5区・神野大地が“柏原超え” 創価大が初出場
10月の出雲駅伝が台風で中止となり、11月の全日本大学駅伝は駒大が史上2校目の4連覇を達成。駒大は10000m27分台のエース・村山謙太(4年)や同28分05秒79の主将・中村匠吾(4年)らを擁し、優勝候補筆頭に挙げられていた。 記念大会だった前年と異なり、出場校は21チーム。2003年から13年まで出場していた選抜チームが、2年ぶりに「関東学生連合」という名称で復活した。また、箱根山中にある函嶺洞門が通行禁止となったことにより、5区と6区の距離が20mずつ延長(実際には再計測により5区は200m短縮)。それぞれ区間記録がリセットされた。 10月の予選会では前回出場校の法大、東農大、専大、国士大が姿を消した一方で、本格強化26年目の創価大が10位で本戦初出場を決めた。 1区は13人の集団のまま15kmを43分51秒で通過。直後に青学大の久保田和真(3年)が一気のギアチェンジで仕掛けると、駒大・中村、東洋大・田口雅也(4年)、明大・横手健(3年)だけが対応して4人に絞り込まれた。18.7kmで田口が仕掛けたものの、3人を振り切れず、19.6kmで今度は一時集団から離れかけていた中村がスパート。ここで田口と横手はついていけず、久保田だけが粘りを見せたが、残り1kmを切って中村が再度抜け出した。優勝候補筆頭の駒大が12年ぶりに1区区間賞を獲得し、1秒差で久保田、7秒差で横手が続いた。 2区では駒大の村山謙太(4年)、東洋大の服部勇馬(3年)、青学大の一色恭志(2年)と各世代を代表する選手が先頭争いを繰り広げる。序盤は村山がほぼ同時にスタートした一色を突き放して独走態勢を築いたが、後方から迫りくる服部が5.4kmで村山に追いつき、しばらく並走が続く。19.1kmでスパートを放った服部がリードを広げ、トップで中継。中継所手前では一色が村山に追いつき、先頭から2秒差でほぼ同時に中継所に飛び込んだ。区間賞は服部が獲得し、16位から8人抜きを見せた城西大の村山紘太(4年)が区間2位で双子の兄・謙太に3秒差で“勝利”した。 3区では駒大の中谷圭佑(2年)が先頭に立ち、首位を独走。一時、後方から迫りくる明大の有村優樹(4年)に8秒差まで迫られるも、ラストで鋭いスパートを炸裂させてトップを死守した。区間賞は中谷が前年の4区に続いて獲得し、有村はわずか1秒差の区間2位に涙を流した。先頭から49秒差の3位で青学大、その3秒差で東洋大が続き、そこから5位の早大までは1分28秒もの差がついた。 4区では駒大の工藤有生(1年)が首位を独走する一方で、青学大の田村和希(1年)が明大の松井智靖(4年)に追いついて2位争いを展開。工藤と田村は区間記録(54分35秒)を上回るペースで推移し、先に中継所に着いた工藤が54分31秒で区間新を達成。しかし、2位争いを1秒差で制した田村が54分28秒で工藤を上回り、区間賞と“区間記録保持者”の称号を手にした。前回王者の東洋大は先頭から1分36秒差の4位とやや出遅れた。 そして5区では新たなる山のヒーローが誕生した。青学大の神野大地(3年)が46秒前でスタートした駒大の馬場翔大(3年)に10.2km過ぎで追いつくと、200mほど並走したのち突き放していく。神野はそのまま2012年に柏原竜二(東洋大)が樹立した“参考記録”の1時間16分39秒を上回るペースで山を駆け上がり、リードを大きく広げて芦ノ湖のフィニッシュへ。 そのタイムは衝撃の「1時間16分15秒」。区間2位に2分30秒の差をつけ、青学大に初の往路優勝をもたらした。 往路2位は4分59秒差で明大が入り、さらに1分50秒差で東洋大が3位。駒大の馬場は22km手前からふらつき始め、最後は地面に何度も手を着きながら歩くように4位でフィニッシュへたどり着いた。また、8位以下のチームが先頭から10分以上の大差がついたことで、13チームが復路一斉スタートとなる事態となった。 迎えた復路。青学大は約5分のセーフティーリードを守るどころか、さらに大きく広げていく。 氷点下5.6度という厳しい寒さに見舞われた中でスタートした6区では村井駿(3年)が区間2位と好走。2位の明大との差を5分42秒に広げると、7区の小椋裕介(3年)、8区の高橋宗司(4年)、9区の藤川拓也(4年)と3連続区間賞でライバル校につけ入る隙を与えない。10区の安藤悠哉(2年)も区間2位と盤石の走りで締め、青学大が圧巻の継走で初の総合優勝を達成した。総合タイムの「10時間49分27秒」は、参考記録ながらも2012年に東洋大がマークした10時間51分36秒を2分以上も上回る“史上最速”だった。 7区の小椋裕介(左)から8区の高橋宗司へのタスキリレー。高橋は2年時の8区に続く2度目の区間賞獲得だった 2位争いも激戦となり、6区と7区で1つずつ順位を上げた駒大が2年連続の準V。往路3位の東洋大は6区と9区で一時4位まで落としたものの、トップ3を確保した。大六野秀畝、有村、松井、文元慧、山田速人ら“最強世代”の4年生を擁した明大は4位にとどまった。 5位に早大が入り、6位の東海大は2011年に両角速駅伝監督が就任して以降では初のシード権獲得。7位は10区で寺田博英(4年)が区間賞の快走を見せた城西大で、前回19位、予選会9位通過から大躍進を遂げた。 9位の山梨学大はケニア人留学生のエノック・オムワンバ(3年)をケガで欠き、2区終了時で最下位(20位)と大幅に出遅れたが、3区の井上大仁(4年)から徐々に追い上げを見せて総合9位で3年ぶりシード権をつかんだ。 大会最優秀選手に贈られる金栗四三杯は青学大の神野が受賞。青学大は出走10人中8人が3年生以下で、来たる“黄金時代”の幕開けを告げる大会となった。
月陸編集部