『おむすび』仲里依紗の告白に胸が締め付けられる “真紀ちゃん”が再び結んだ姉妹の絆
『おむすび』第29話では、歩(仲里依紗)が結(橋本環奈)に親友への思いを打ち明けた。 【写真】第30話、仕事を明かすためにカラオケボックスに来た歩(仲里依紗) 過労で倒れた結は徐々に元気を取り戻していった。東京へ戻る前に、歩は結と2人きりで話す。「ごめんね」と歩は謝り、神戸へ行こうと言った理由が真紀(大島美優)の墓参りのためだったと話した。「あの日」震災で親友の真紀を失ってから、歩は真紀の前に行けていなかった。行けば真紀がいなくなった事実を認めたことになると感じていたからだ。 転校した糸島の中学校でも歩のつらさは消えなかった。何事もなかったかのような日常を前にして、現実を受け入れたら「本当に真紀ちゃんがいなくなっちゃうんじゃないか」と思い、中学に行けなくなった。目に涙をため、一言ひとこと絞り出すようにしゃべる歩の告白に胸が締め付けられた。 「私が代わりに真紀ちゃんのやりたいことをやろうって思ったの」 親友を亡くした心の痛みは消えなかったが、歩は真紀のために一歩を踏み出す。第29話では、歩がギャルになった理由が明かされる。東京へ行ってギャル雑誌のスナップに載ること。ささやかだが2人にとって大事な“夢”だ。安室奈美恵を聴き、部屋でギャル雑誌を読む歩の心には、いつも真紀がいた。 歩が結に本当のことを話そうと思ったのは、幼い頃の記憶を歩から聞かされたことが直接的なきっかけと思われる。「あの日」を境に、それぞれが癒えることのない痛みを抱えて生きてきた。幼かった妹に歩は真紀の死を話すわけにいかなかっただろうし、結も変わってしまった姉に戸惑うばかりで、共通の親友である故人について語り合う機会はなかったのだ。
真紀の存在は高校生の歩の行動原理になった。「真紀ちゃんだったら」どうするだろうと浮かんでくるくらい、歩は真紀とずっと一緒に過ごしてきたし、そのあり方は歩にとって自然なものだった。ハギャレンもわざわざ結成したわけではなく、自然発生的に生まれた「私がやってきたことは全部真紀ちゃんがやりたかったこと」「真紀ちゃんの人生を生きただけ」。歩が自らを指して偽物のギャルと言うのも同じ理由だろう。歩にとってギャルが先にあったわけではなく、真紀に対する約束を果たそうとした結果がギャルだった。 「うれしかった」と歩は結に微笑む。結も歩も真紀のことを一瞬たりとも忘れるはずがなかった。真紀を通して人はずっとつながっていた。 震災とギャル、姉妹の絆が一本の線で結ばれた第29話。感動的なシーンを涙で終わらせないバランスが本作の持ち味だ。付き人の佑馬(一ノ瀬ワタル)が持ち上げ、永吉(松平健)が言いふらしたことで、歩はすっかり「大女優」として噂になってしまった。この顛末はいかに?
石河コウヘイ