夏休み明けに命を絶つ子どもたち……親が気付ける“心のSOSサイン”を児童精神科医に取材
学校が嫌な理由を探るより、大切なこと
――さわ先生なら、夏休み明けに不安を感じている子どもにどんな言葉をかけますか? さわ:私の場合は、「先生も月曜日に仕事に行くのめっちゃ嫌なんだよね、家にいたほうがいいよね」と、学校に行くのが嫌だという気持ちに共感することが多いです。そこで、「だけど、学校って楽しいこともあったりしない?」と聞くと、子どもによって違うのですが友達と遊ぶことや、給食の時間なら好きだと言ったりします。 夏休み明けは、学校で楽しかったことを忘れてしまって嫌なことばかり思い浮かべてしまうことがあるので、楽しいことを思い出させてあげながら話を聞くことがありますね。ただ、子どもが10人いたら10人答えが違いますから、「楽しいことがあるなら、行きなさい」というような伝え方はしないようにしています。 一番大切なのは、子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときに「そんなこと言わないで行ってきなさい」と頭ごなしに否定しないことです。子どもに話も聞かずに追い詰めるのはやめてほしいなと思います。 ――親が子どもの話を聞くときに、どんなことを心がけるといいのでしょうか。 さわ:「学校が嫌な理由が分からなくてもいい」「話せそうだったら話してね」という前提で話を聞くことが大事だと思います。 でも、学校に行きたくない理由なんて本人でもわからないことが多いんです。あるお母さんから「明確な理由がないのに休ませていいんですか」とご質問をいただいたことがあるのですが、大人でもモヤモヤした感情の理由が分からないことがありますよね。 そこで「理由がないなら認めない」「そんな理由なら学校にいきなさい」という対応をするのではなく、子どもの気持ちに寄り添って話を聞いてあげてほしいと思います。
まずは公的な窓口に相談を
――「お母さん(お父さん)には話したくない」と言われてしまった場合はどうしたら? さわ:相談相手はかならずしも親である必要はありません。例えばスクールカウンセラーなど「お母さん以外の人に相談することもできるよ」と提案してあげるのもいいでしょう。スクールカウンセラーはほとんどの小学校、中学校、高等学校に配置されていて、子どもたちだけでなく保護者や教職員に対する相談にも対応しています。 子どもがスクールカウンセラーと話したくないという場合は無理強いせず、親御さんだけで相談に行ってみてもいいと思います。また、学校の担任の先生と連携が取れているなら、先生に学校での様子を聞いてみると、事情がわかるかもしれません。 学校以外にも相談先はあり、厚生労働省のサイトには「いじめや不登校、ひきこもりなどの相談窓口」として児童相談所や、児童家庭支援センター、教育センター、引きこもり地域支援センター、発達障害者支援センターなどが紹介されています。 子どもの状態から医療のケアが必要だと判断された場合には、こういった相談窓口から私たちのような医療機関を紹介されることもあります。各専門機関の連携が取れているという意味でも、まずは公的な窓口を利用してもらいたいと思います。 【精神科医さわ】 児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師。名古屋市「塩釜口こころクリニック」院長。開業直後から予約が殺到し、現在も毎月約400人の親子の診察を行っている。これまで延べ3万人以上の診察に携わっている。2023年11月医療法人霜月之会理事長となる。近著に『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること』 【都田ミツコ】 ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
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