【西田亮介が語る】なぜ、日本の知的生産性はこれほどまでに低いのか?修士・博士の少なさと無関係ではないのでは
■ エビデンスに基づいて議論できない日本のビジネスパーソン 安田さんは、日本の労働生産性の低さの原因に「人と組織」を挙げています。たとえば日本のビジネスパーソンは何かを主張する際にも、あまりデータを用意しません。「私はこう思う」しかない場合が非常に多くてうんざりです。 「私はこう思う」「これをやりたい」。そこにリーズニングとかエビデンスはないわけです。あるいは都合のよいデータのつまみ食い。 安田:人によりますけどね(笑)。日本のビジネスパーソンが全員、リーズニングとかエビデンス思考がゼロなわけじゃない。ただ、そういったスキルを磨く時間や機会が海外のビジネスパーソンに比べて乏しいですよね。 【安田洋祐(やすだ・ようすけ)】 大阪大学経済学部教授。専門は経済学。 1980年東京生まれ。ビジネスに経済学を活用するため2020年に株式会社エコノミクスデザインを共同で創業。メディアを通した情報発信、政府の委員活動にも積極的に取り組む。著書に『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』(日経BP・共著)、監訳書に『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』(東洋経済新報社)など。 もちろん、少し誇張気味に表現しています(笑)。そのほうが論点が先鋭化したり、読者の皆さんに自分事として憤っていただけるのではないかと思いまして。 日本のビジネスセクターはバブル崩壊を機にいち早く世界との競争に負け、いまも負け続けているのに、政治や教育などほかのセクターに責任転嫁してばかり。でも、何も変えないまま。変わらないまま。モノを考える力が根本的に欠落しています。 日本の経済界が世界的に負けた理由について、ぼくは直接にはビジネスセクターが弱かったと考えます。教育のせいだとか政治のせいだとか税金が高いとかいいますが、それでもやっぱり現場で人がいるわけですから、組織と人が弱かったと考えるべきです。 また知的生産性の低さと、修士・博士の取得者数の少なさは無関係だとも思えません。本連載では日本の知的生産性の低さについて、いくつかの角度から探っていきましょう。
西田 亮介/安田 洋祐