【卓球】「家庭が壊れてしまう」と嘆くプロ卓球コーチの憂鬱
プロコーチでは稼げない欧州。日本でも欧州でも優秀なコーチがいない現実
日本の卓球界ではプロコーチが急増している。民間の卓球場が全国に800ほどあると言われ、コーチを生業とするプロコーチは1000人を超えるのではないか。卓球王国・中国でのプロコーチの数は不明だが、プライベートコーチでこれほどの数がいるのは日本だけだろう。 ヨーロッパの卓球界では優秀なプロコーチが枯渇している。優秀なコーチがいないことがヨーロッパの卓球レベルの低下を招いてきたと言われてきた。以前はスウェーデン、ドイツ、フランス、旧ソ連、クロアチア(旧ユーゴスラビア)、ハンガリーなどに優秀なコーチがいて、ヨーロッパ全体のレベルアップに貢献した。 ヨーロッパでは代表チームの監督、コーチは長くできないと言われている。まずは遠征が多いからだ。世界選手権、五輪、大陸選手権(ヨーロッパ選手権)、そしてWTTのツアーが間断なく続き、それに国内合宿などを行うなど、以前よりもタイトなスケジュールになっている。年間200日以上も家を空けることになり、家庭を優先するヨーロッパの人たちにとって、相当タフな状況となる。「家庭が破壊される」とこぼすコーチは多い。その状況は日本の代表コーチも同じだろう。 代表監督、コーチというのはプロコーチであれば、上り詰める最高のポジションだろうが、こういった代表監督を取り巻く環境をみんなが知っているがゆえに、ヨーロッパではコーチのなり手がいないのが現実だ。 それだけではない。プロ選手としてプレーしていた選手たちがプロコーチ(監督)でお金を十分に稼ぐことができないのもその要因の一つだろう。 ましてや、プロ選手の中には、高校にも行かずにプロ選手になった人は少なくない。もしくは高校に行っていたとしても卓球中心で勉強をおろそかにしていたとしたら、現役を引退しても会社勤めをするにはスキルや知識が少ない。そのためにヨーロッパではリーグを掛け持ちをしても、40歳を過ぎてもプロ選手で有り続ける人も少なくない。もちろん生活のためだ。 今、ヨーロッパでも日本でも聞こえてくるのは「優秀なコーチがいない」という声だ。優秀なコーチ育成には、彼らのキャリアを活かす環境が必要になってくる。 <卓球王国PLUS「今野の眼」より抜粋>