日本人に理解できない「トルコのジレンマ」
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イラン・ライシ大統領とトルコ・エルドアン大統領の会談について解説した。
イランとトルコの大統領が会談、イスラエルのガザへの攻撃を非難
イランのライシ大統領は1月24日、トルコの首都アンカラを訪れ、エルドアン大統領と会談した。2人は会談後に記者会見し、パレスチナ自治区ガザでイスラム原理主義組織ハマスへの攻撃を続けるイスラエルや、後ろ盾のアメリカを批判した。 宮家)トルコは親日国であり、日本にとってはとってもいい国なのです。ただ、トルコ全体として考えると、歴史的にはオスマン帝国の末裔ですよね。冷戦時代には北大西洋条約機構(NATO)に入って、西側諸国の一員を務めた。そして、トルコにとっては欧州連合(EU)加盟が悲願なのです。トルコ人は「自分たちはヨーロッパ人だ」と思っているので、当然EUに入れると思い、何度も交渉してきた。しかし、EUは「入れない」とは言いませんが、「入れる」とも言わない。その状態がずっと続いていました。
欧州に入れず、中東にも戻れないが、昔のような影響力を取り戻したいトルコ
宮家)それでエルドアンさんのような人が出てくると、「もういい。お前らはキリスト教徒だろう? だから俺たちを入れないのだ」となるわけです。しかし、それでは中東で彼らがリーダーシップを発揮できるかと言うと、過去にやりたい放題やったからトルコに対する恨みがないわけでもなく、これもまた微妙なのです。つまり、ヨーロッパにも入れないし中東にも戻れない。でも能力のある国民であり、戦略的にも重要な地位を占めている国。そしてエルドアンさんのような強力な大統領が出てきて、長年やっているわけでしょう? 「そろそろトルコの影響力を昔のようにしたい」と考えるのは当然なのです。 飯田)なるほど。 宮家)ところがEUには入れない。だったら、いままでのように西側にべったりではなく、中東のなかで全方位外交的なものを行う必要があります。イランやロシアとも付き合わなければならない。ウクライナ戦争が起こればロシアとの仲介をしてみたり、シリアにも手を出してみたり、いろいろやって影響力の維持・拡大を考えているのだと思います。今回もそのトルコのジレンマ外交を象徴するような動きです。