セレッソを単年赤字に転落させたフォルラン投資ミス
フォルランは半年間の契約延長オプションを行使して残留し、オフの主力流出も南野と日本代表候補に選出されたFW杉本健勇(川崎フロンターレ)だけにとどめた。 フォルランの推定年俸は3億円。ハリルジャパンにも招集されたキャプテンのMF山口蛍や名古屋グランパスから移籍したベテランのFW玉田圭司らを擁する陣容はJ2では群を抜いている。チーム人件費も決して安い金額にはならない。 しかし、J2に降格すれば必然的に広告料収入や入場料収入も減少してしまう。金鳥スタジアムでの試合数を「15」、ヤンマースタジアム長居でのそれを「6」と再び逆転させているのも、観客動員数を多く見込めないと判断したからだろう。 2014年度終了時点で、セレッソは9500万円の資産超過となっている。この状態で2015年度の見込み決算で9500万円を超える赤字が計上され、年度末までに解消される見込みがないと判断されれば債務超過状態に陥る。 その場合は2016年シーズンのJ1及びJ2を戦うために必要なクラブライセンスが発行されず、J3での戦いを余儀なくされてしまう。青影クラブライセンスマネージャーもこう続ける。 「増資も何もなしに9500万円以上の赤字が計上されれば、あくまでも仮定の話ですけれども、その可能性はあるかなと思います」 J2トップの10ゴールをあげるなど、格の違いを見せつけている今シーズンのフォルランだが、契約が切れる7月末以降の去就は現時点で未定だ。延長すれば再び億単位の年俸が発生することもあり、財政事情からそう簡単にはゴーサインを出せないのだろう。 J1及びJ2で債務超過クラブがゼロとなったことを、青影クラブライセンスマネージャーは「決してゴールではなくて、クラブがより安定して成長していくためのスタートラインに立った」と位置づけた。 もっとも、Jリーグが思い描く「拡大均衡路線」がより鮮明になるかどうか、つまり将来へ向けた選手補強などの先行投資が盛んになるかどうかはまだわからない。フォルランショックに見舞われ、一敗地にまみれたセレッソがたどっていく軌跡を、他のクラブのフロントは慎重に見極めている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)