こりゃホンダと日産が統合を目指すワケだ…日本企業の「技術の遅れ」がもはや深刻レベルだった
2025年は自動車業界の大変革がいっそう際立つ年になる。大手メーカーの勢力図の変化に加えて、モビリティーの価値そのものが変化しているからだ。鍵を握るのは電動化とソフトウエア。しかし、日本勢の技術力には不安が残る。何より、もっと柔軟でオープンな発想力が求められるはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫) ● 100年に一度の変革期を迎えた自動車業界 世界の自動車産業が100年に一度といわれる大変革期を迎えている。少し前まで順調だった電気自動車(EV)へのシフトが、米欧で鈍化したことにより、EVシフトに多額の経営資源を投じたメーカーの業績が悪化している。 その一方、中国では政府の支援策がありEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などへのシフトが進んだ。これを背景に、中国メーカーの躍進は目覚ましく、欧米の有力メーカーを脅かすまでになっている。 勢力図の変化に加えて、モビリティーに対する大変革も明らかだ。それはつまり、自動車のソフトウエア化だ。AI(人工知能)の急成長や高速通信技術の発達により、走行中のクルマがデータを交換するなど、新しい体験が可能になっている。これまでの走行性能とは違った次元で、自動車の新しい価値を創造しつつあるのだ。 車載用ソフトウエア開発に関して、わが国メーカーは遅れているといわれる。わが国の自動車関連企業は、今後、どうしたら生き残れるのか。製造技術の成功体験に固執することなく、業界の垣根を越えて、新しい発想の実現に取り組むことができるだろうか。
● ホンダと日産自動車が経営統合を目指すワケ 2024年は米国や欧州でEV補助金の削減や終了、また充電インフラの不足などもあり、EVシフトが鈍化した。一方でHV車の人気が高まったことで、エンジン車やハイブリッド車(HV)、PHV、EV、燃料電池車(FCV)など多様な選択肢を提示する、トヨタ自動車の“全方位型戦略”が優位になった。 ただし、中国では政策に助けられてEVやPHVへのシフトは進んだ。中国EV最大手のBYDは積極的な値下げも実施することでシェアを高めた。そのあおりを受けたのが、これまで中国で収益を伸ばしてきた欧米勢だ。米テスラでさえ販売の勢いを失った。米GMやフォードも中国での事業戦略の修正を余儀なくされた。 そうした大変革期で特に象徴的だったのが、フォルクスワーゲンの大規模リストラだ。創業以来初となるドイツ国内工場の閉鎖を検討するまでに追い込まれた。ただし、労働組合が雇用維持を求め大規模なストライキを行ったことで、経営陣はリストラ計画を縮小するに至った。 また、ステランティス(アルファロメオ、クライスラー、シトロエン、ダッジ、フィアット、ジープ、マセラティ、オペル、プジョーなど14ブランド)はイタリアでの生産台数を大幅に落としていたことに対して、イタリア政府との関係が悪化した(最新状況では新経営計画で合意)。 なお、欧米のEV戦略の行き詰まりは、完成車メーカーだけでなく、自動車部品、関連の石油化学、はたまた鉄鋼などにも影響を与えている。 業界再編も起きた。わが国では、ホンダと日産自動車が経営統合を目指すことになった。三菱自動車も合流する見込み。日産は販売台数の減少を人員削減などコストカットでしのいできたが、業績回復が思うように進んでいない。 この件では、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者、郭台銘(テリー・ゴウ)氏の動きも影響したようだ。ゴウ氏は、「自動車は走るスマホになる」と発言し、日産に秋波を送り経営参画を狙ったとみられている。