「ゆるして」悲痛なメッセージが国動かす 目黒女児虐待死 警視庁150年 143/150
「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」-。平成30年3月、5歳の女児がノートにこう記し、親からの虐待で死亡した。 亡くなったのは東京都目黒区のアパートに住む船戸結愛(ゆあ)ちゃん。死因は低栄養などで引き起こされた肺炎による敗血症で、死亡時の体重は2歳児並みの約12キロだった。 母親の連れ子だった結愛ちゃんは、以前住んでいた香川県で、28年から2度、父親からの虐待の疑いがあるとして児童相談所が一時保護。しかし児相は父親に対して十分な指導を行っていなかった。30年1月までに一家は目黒区に引っ越したが、品川児相が同2月に訪れた際に母親は面会を拒否。児相は結愛ちゃんが衰弱している状況を直接確認できなかった。 警視庁は結愛ちゃんの死亡翌日に、傷害容疑で父親を逮捕。6月に保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕する際に母親も同容疑で逮捕した。捜査1課は部屋から見つかった覚えたてとみられるひらがなで謝罪の言葉などをつづった結愛ちゃんのノートの文章を公開。読み上げた小林敦捜査1課長は声を詰まらせたという。 父親は懲役13年、母親は懲役8年の判決が下された。母親は夫による心理的なDV(配偶者間暴力)を受けていたことが認められた。 事件の翌年には、親による子供への体罰を禁止し、児相の体制強化を柱とする改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が成立した。児童虐待の相談件数は増加傾向が続いているが、再び最悪の事態が起きないよう、関係機関は連携をより強化。結愛ちゃんが残した悲痛なメッセージが国を動かした。(前島沙紀)