「パーオン禁止ラウンド」で"賢いゴルフ"を磨いてる!? 日本アマ王者・中野麟太朗を輩出した早大ゴルフ部の育成方針【大学ゴルフ部の教え①斉野恵康監督】
トレーニングは「強化」だけでは足りない
「就任して10年は勝てず、その後10年勝ち続けた名監督に、何が変わったのか聞きました。"フィジカル"という答えを望んでいたんです。でも、もちろん最新のトレーニング、練習、戦略は取り入れて続けてきたけれど、あえて言うなら『文化』です、という答えが返ってきた。それまで、トレーニング場にテーピングのカスが落ちていたり、寮でスリッパが乱雑に置いてあるのが当たり前だったと。それを下級生にさせるのではなく、気づいた人間が率先して片づける。練習準備やメニュー決めなども4年生が行い、下級生に目的から伝える。そういう『文化』を変えるのに10年必要だったそうです。そこで僕は、トレーニングで体を作るというベースの上で、『強化と文化』で行こうと決めました」 “文化”は、前監督が厳しく伝えてきたので指導する必要はなかった。ただ、強化のほうは手つかずの部分が残っていた。 「人格が素晴らしくてもゴルフが下手だと言い訳になりますから。僕が最初に送り出した主将が、『今まで競技成績より人格形成ばかり言われることに違和感を覚えることもあったけど、両方やるとなったとき、一緒に目指せると思えた』と言ってくれました」 “答え”が容易に手に入る時代だ。 「僕たちの時代は答えを本で探したり知人に三顧の礼で教えを請うたり、努力して手に入れた。今は、ネットなどにすべて答えがある。だから、学生たちに何かを伝えるときも1から10まで、また結論はこうだよと伝えないといけません」
今、早稲田は関東Aブロックリーグ戦で優勝争いに顔を出すくらい強くなった。 「たまたま、中野麟太朗を始めとする強い世代が入学してきたからです。僕はラッキーだなと。でも運はあるほうなんです」 と笑うが、 「スターを育てるという意識はない。中野を特別扱いはしないけれど、逆に学生のなかに自然に追いつけ追い越せという空気が出ている。(斉野が長年委員を務める)KGAのジュニアの保護者講習で心と身体の話をします。心は、先にゴルファーになって、次にアスリート(競技ゴルファー)になると。エチケット、マナーが先にくる。身体は逆で、どんな競技もできる運動能力を総合的に高めることからです」