センバツ高校野球 常葉大菊川、春の便り 10年ぶり5回目選出(その1) /静岡
◇加藤学園は補欠校に 第95回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)の選考委員会が27日にあり、県内からは常葉大菊川(菊川市)が東海地区代表として、10年ぶり5回目のセンバツ出場を決めた。昨年秋の東海大会で準優勝した実績が高く評価された。また東海大会で常葉大菊川に敗れたもののベスト4に入った加藤学園(沼津市)が同地区補欠校に選ばれた。組み合わせ抽選会は3月10日に行われ、大会は同18日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。【皆川真仁、石川宏】 常葉大菊川の選手たちは午後4時前、菊川市内の屋内練習場で中沢俊一校長から「支えてくれた人たちへの感謝を忘れず、甲子園で精いっぱい菊川らしい野球をしてきてください」と励まされると、喜びをかみしめるようにほほ笑んだ。保護者たちが見守るなか、選手たちは石岡諒哉監督(33)を3度胴上げし、10年ぶりの春切符を祝った。 昨夏の県大会。新型コロナの感染拡大で、とりわけ3年生たちが涙をのんだ。4番・捕手としてチームをけん引した鈴木叶(2年)は「結果で3年生に恩返しができて良かった」とほっとした表情を浮かべた。引退後も下級生とともに練習で汗を流している3年、武田功志さんは「自分たちの分まで、一つでも多く勝ってほしい」とエールを送った。 昨秋の東海大会は投手陣を中心に粘り勝ったが、石岡監督は「打率1割台で失策も多かった。全てにおいてレベルアップしないと全国では勝てない」と表情を引き締めた。指揮官としては就任3年目で初めて聖地に挑む。「甲子園では野球がスピーディーになるので準備が大切」といい、2007年選抜出場時の経験をしっかり伝えるつもりだ。 暫定の「甲子園メンバー」18人が既に発表され、開幕に向け、選手たちの激しいポジション争いが始まった。平出奏翔主将(2年)は「未完成なチームなので、チーム一丸で練習の質を上げたい。出るからには優勝を目指す」と意気込んだ。 ◇「現実受け止め、前を向きたい」 加藤学園監督 加藤学園の米山学監督(44)は、この日、沼津市足高の雨天練習場でトレーニングをしていた選手らを集めて、補欠校にとどまった選考結果を伝えた。選手たちは落胆した表情も見せたが、気持ちを切り替えようとすぐに練習に戻っていった。 米山監督は「現実を受け止めて前を向きたい。(東海大会準決勝の)常葉大菊川戦は完封負けし、得点力という課題もあった。夏に向けて、走攻守全てをレベルアップし、この悔しさを夏には喜びに変えたい」と語った。 太田侑希主将(2年)は「センバツに行けないという結果はもう変わらない。夏に向けた強い気持ちはどの高校よりもあると思う。“しっかり”を意識し、絶対に県内でどこにも負けないチームをつくりたい」と力を込めた。 ◇本紙が号外発行 毎日新聞は27日、常葉大菊川のセンバツ出場決定を報じる号外を発行した。同校やJR菊川駅で計約3000部を配った。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇2007年春に優勝 常葉大菊川は、菊川市半済にある私立中高一貫校。創立は1972年。教育目標に「創造」「礼節」「自立」を掲げ、人間教育や大学進学教育、異文化理解教育に力を入れる。 生徒数は2023年1月1日現在、1014人。普通科は「普通コース」、「文理コース」、中高一貫の「一貫Sコース」に分かれる。また美術・デザイン科も設けている。 野球部は1983年に創部。甲子園は春4回、夏6回出場し、2007年春に優勝、08年夏は準優勝した。22年のプロ野球ドラフト会議では、3年生の安西叶翔投手が日本ハムから4位指名、OBの奈良間大己内野手が同5位指名をそれぞれ受けた。 ソフトボール部や陸上部も、全国大会に出場した経験がある。