「ペレがこの屈辱を目にしなかったことだけが救い」クラブ史上初の2部降格でブラジルの名門サントスが“大炎上”。バスや車に次々と火が…【現地発】
怒り狂ったサポーターが選手たちを罵倒し、小石を投げつける
試合開始前の時点で、サントスは勝点43の15位(20チーム中)。降格圏である17位のチームより2ポイント上回っていた。最終節のホームゲームでフォルタレーゼに勝つか、他の試合の結果次第では引き分けでも残留できる状況だった。 前半のうちに失点したが、58分に追いつく。ところが、残留争いをしていたチームがいずれも勝ち越し、どうしても勝利が必要な立場に追い込まれる。セットプレーではGKも上がって攻め立てるが、ゴールが遠い。アディショナルタイムにボールを失い、前へ出ていたGKの頭上を超すシュートを決められて万事休す。クラブ史上初の2部降格が決まった。 それまで懸命にチームを応援していた地元サポーターは、怒り狂った。選手たちを罵倒し、小石を投げつける。スタジアムの外では、バスや車に次々と火がつけられた。 【画像】サントスのファンによって燃やされた車 12月6日、ブラジル全国リーグ最終節が行なわれ、敵地でクルゼイロと引き分けたパルメイラスが2シーズン連続12回目の優勝を果たした一方で、かつてキング・ペレらが黄金時代を築き、ネイマールも活躍した名門サントスが2部へ陥落した。 最終成績は11勝10分け17敗で39得点・64失点。得失点差はマイナス25という無残なものだった。 今シーズン指揮を執った監督は、暫定を含めて実に5人。そのたびに戦術とレギュラーが変わり、チームは混乱し続けた。 攻撃面では、13得点を挙げた23歳のマルコス・レオナルドを除くと軒並み不振。攻撃の組み立てを担った元ブラジル代表MFルーカス・リマが精彩を欠いたのが痛かった。 守備面では、多くの選手が試されたが状況判断の誤りと技術的なミスが続出し、連携も不十分だった。 もっとも、サントスの低迷はいまに始まったことではない。2019年シーズンに準優勝したものの、2020年シーズンは8位。とりわけ、21年に現在の会長が就任してから補強の失敗が続き、10位、12位とさらに低迷。今シーズンのサンパウロ州リーグでもグループステージで敗退するなど、予兆はあった。 昨年末にペレが亡くなってから1年。ファンの間からは、「存命中にキングがこの屈辱を目にしなかったことだけが救い」という声がある。 文●沢田啓明 【著者プロフィール】 1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
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