カラスからハウス守る テグスで簡単、破損9割減 農研機構が技術まとめ
農研機構は、ビニールハウスの上部にテグスを張り、カラスにビニールを破られるのを防ぐ技術をまとめた。ハウスの両側に1メートル間隔で打ち込んだパイプに、テグスを留めた弾性ポールを差し込み、ジグザグ状に張り巡らせる。脚立も必要なく、農家自ら張れる。試験では、カラスが開ける穴の数を9割減らせた。 同機構によると、カラスの爪やくちばしでビニールを破られ、ハウスの保温性が下がったり、補修の手間がかかったりする被害が各地で出ているという。 今回の技術に必要な資材は直管パイプや弾性ポール、透明テグス、トンネルパッカー。棟高3メートル、間口5メートル、奥行10メートルのハウスに設置する場合、資材費は2万3000円程度。 直管パイプをハウスの両側に、ハウスから1メートル離して1メートル間隔で打ち込む。テグスは両端をそれぞれ別の弾性ポールにトンネルパッカ―で留める。ハウスを挟んで向き合うパイプに弾性ポールを差し込み、テグスをハウス上部に張る。その後、弾性ポールから斜め向かいの弾性ポールにもテグスを張ることで、ハウス上部にジグザグ状にテグスが張られる。 カラスがハウスに降り立ちにくくするため、テグスはハウスから30センチ程度上方に張る。ハウスの妻面の上部は特にカラスが止まりやすい。そのため、妻面から50センチ外側と妻面の真横、妻面から50センチ内側と50センチ間隔でパイプを設置し、テグスの密度を高める。妻面より外側にくるテグスは他の箇所よりも低めに張るのも、被害を防ぐポイントになる。 弾性ポールの長さが不足するため棟高3・5メートル超のハウス、またテグスの垂れ下がりが大きくなってしまうため、間口20メートル超のハウスには向かない。 同機構がカラスを飼育する施設内で行った試験では、テグス無しのハウスは4カ月半でカラスに257個穴を開けられた。一方、テグスを張ったハウスは5カ月半で21個だった。 同機構の吉田保志子上級研究員は「透明テグスは、カラスにとって見えにくいがゆえに警戒心を与え、侵入をためらわせる効果があると考えられる」とする。同機構はこの技術を「ハウスにテグス君」と名付けて、設置方法などをホームページで公開している。(森市優)
日本農業新聞