【避妊具を着用拒否】「性行為に同意でも『避妊拒否』は違法」 女性の『性的な自己決定権』侵害を認める初の判決が確定 2度『避妊拒否』でいずれも妊娠 2度目は出産 嘘ついて子どもの認知拒否
性行為の避妊をめぐり、女性の『性的な自己決定権』を認める異例の判決が確定しました。 性行為の同意があるからといって、避妊しなくても良いという同意があるわけではありません。 こうした当然ともいえる女性の権利が裁判で正面から認められたのは初めてということです。
■1度目は既婚「独身」と嘘をつき性交渉 避妊具着用拒否で妊娠
判決文などによると、原告の20代の女性は2020年、中学の同級生で過去に交際していたこともある男性(20代)と同意の上で性的関係を持ちました。 このとき、ホテルに備え付けの避妊具をつけてほしいという女性の求めを男性は無視。 その後、女性は妊娠、流産しました。 また、このとき男性は別の女性と結婚していましたが、女性には「独身である」と嘘をついていました。
■2度目の避妊拒否 2度目の妊娠で出産 「俺、結婚してるから、認知は難しそう」 2度目は離婚し独身だった男性
その翌年、2人は再び性的関係を持ちましたが男性は、このときも女性の避妊の要求に応じず、女性は2度目の妊娠をし、その後、出産しました。 男性が独身であると思っていた女性は子どもを認知するよう頼みましたが「俺、結婚しているから、認知は難しそう」と男性は、認知を拒みました。 しかし、実はこの男性、1度目に女性が妊娠した際には結婚していましたが、このときはすでに離婚し、独身だったのです。 またしても、女性に嘘をついたのです。 2022年、男性の子供を出産した女性は、認知を求めて調停手続きをしましたが、男性が無断欠席するなど、不誠実な態度だっため、裁判を起こしました。
■「貞操権」「性的な自己決定権」争う
女性は、そもそも男性が既婚者と知っていたら性行為をしておらず貞操権を侵害されたと主張。 さらに、避妊行為を拒絶された結果、身体的及び精神的苦痛を受けたとして男性に、約173万円の損害賠償を求めました。
■「2人が婚姻を前提にした関係」ではなく嘘は不法行為ではないが避妊拒否は「自己決定権の侵害」 「欲望を満たすために避妊しなかったと考えるのが相当」と裁判官
大阪地裁(仲井葉月裁判官)は、7月19日の判決で男性の「独身である」という嘘については「性交渉に応じるか否かを決める要素の1つであることからすれば、男性が独身と偽ったのは、不適切かつ不誠実な行為であるものの、2人が婚姻を前提にした関係ではなく不法行為であるとまでは評価できない」として違法性は認めませんでした。 一方で、1度目2度目ともに避妊行為の拒否ついては、「妊娠の身体的・精神的負担は女性のみに生じ、性交渉に同意しているとしても避妊に応じず性交渉を続ければ女性の性的な自己決定権を侵害する」と判断。 その上で、「男性は女性の負担や不安を一切顧みない態度で欲望を満たすために避妊しなかったと考えるのが相当」として、男性に慰謝料や1度目の流産の手術費用など約74万円の支払を命じました。 これに対し、双方が控訴せず、8月7日に判決が確定しました。
■「意に沿わない妊娠の不安と負担を防ぐ判決」と代理人弁護士
女性の代理人である向井大輔弁護士によると、避妊行為について女性の性的な自己決定権を認める判決は全国で初めてだということです。 向井弁護士は、「この判決が、意に沿わない妊娠によって生じる女性の身体的・精神的な不安や負担を予防し、また事後的に少しばかりでも軽減することに活かされるとすれば、嬉しく思います」とコメントしています。 (関西テレビ大阪司法担当・菊谷雅美)
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