できる人ほど、語彙が多い理由。一目置かれる言葉の選び方・使い方
「お客さんに出す賀詞交歓会の案内状、つくっておいて」と上司に指示された経験があります。 立場としては、こちらはいわゆる下請けで、年始の忙しい時季にわざわざ時間をつくってもらわなければならないし、出席したくなる案内状づくりに苦労したことを覚えています。 ビジネスでのお誘いやご挨拶は、あらかじめ用意できる書面だけではなく、対面のとっさのシチュエーションでも、きちんとできるようになっておきたいもの。シーンに応じて、ウィットを利かせた言葉が出てくるようになれれば最高ですね。 今回は『できる人の語彙力が身につく本』(三笠書房)より、一目置かれる大人の伝え方を紹介します。
語彙力はちょっとした心がけで身につけられる
言葉はその人の人柄や知性、品性をあらわすものであり、使いこなせる言葉が多ければ多いほど、仕事も人間関係もスムーズになると本書では説いています。 「語彙の多い人」とは言葉の引き出しをたくさん持っている人のこと。逆に「語彙が少ない人」とは言葉の引き出しが少ないか、引き出しの中身が少ないか、中身が貧弱で、対応力や応用力が少ない人。 語彙力はセンスなどと思われがちですが、ちょっとした心がけで身につけることができるのだとか。 その心がけとは、たとえば「この言葉、いいな」「あの人の言い回しには説得力がある」などと、印象に残った言葉をメモするなどして書き留めたり、実際に自分で使ってみる…といったものです。 「映画でも本でも新聞でも、そこから興味深い単語や利用価値の高い言葉をピックアップして、自分の語彙として貯金する習慣を身につければ、やがて流暢に言葉を操れるようになるわけです。 (『できる人の語彙力が身につく本』25ページ) シーンにふさわしい言葉や文面のフォーマットは、検索すればネット上にいくらでも出てきますが、そうして自分の語彙として貯金すれば、やがて自分の人柄や知性、品格となって相手に伝わるというわけです。
相手との関係やシーンで使い分けたい言葉5つ
本書は、まさに語彙力を鍛えるにはもってこいの1冊。 語彙を鍛えるハウツーだけではなく、実際にビジネスで使える言葉や、伝えにくいことをうまく伝える言葉、使い方を間違えやすい言葉がズラリと紹介されています。いくつか挙げてみましょう。 ご厚情を賜り ビジネス常套句の基本の「き」ですね。言葉は知っていても、そもそも「厚情」ってなんでしょう? 厚情とは、文字通り「人情が厚いこと」。相手からの親切や思いやりに対して敬意を示すときに使うため、感謝するものであり、お願いするものではなさそうです。 つきあいが始まったばかりの関係では使いにくいですし、「ご厚情を賜り」を使うことでかえって他人行儀と思われてしまうこともあるかもしれません。 お礼状や年賀状、年始に出すメールのテンプレとして使うのではなく、相手と自分との距離をふまえて、ときにアレンジするなどして上手に扱いたい言葉です。 お膝送り 取引先などを招いた会で「もう少しつめてほしい」「あっちへ移動してほしい」とシーン、よくあります。 でも「動いてほしい」というときの言葉選びって難しいですよね。「もう少し奥へつめていただけますか?」ぐらいしか思い浮かびません。 そんなときに使えるワンランク上の言葉が「お膝送り」(おひざおくり)。「恐れ入りますが、お膝送りをお願いいたします」のように使います。 「あまり耳にしない言葉だからこそ、いい言葉を知っていると一目置かれるはず」と本書では紹介されています。 やぶさかではない よく耳にする言葉ですが、自分で使うシーンをイメージしたことはあるでしょうか。 「やぶさか」は「気乗りしない、気が進まない」という意味で、それを「やぶさかでない」「やぶさかではない」と否定することで、肯定的な表現になっています。 つまり「喜んでやる」「前向きにやる」という意味ですが、そのまま「喜んでさせていただきます!」と答えるよりも、シーンによっては含みを持たせて「やぶさかではないですねぇ」という言葉選びをしたほうが場が盛り上がることもあるかもしれません。 折り紙付き 第三者の確かな保証があることを示す言葉。平安時代から使われているというから驚きます。 この折り紙とは文房具店で売っているようなものではなく、平安時代から使われるようになった折り紙型の小型文書のこと。それが江戸時代に入って、美術品などの高価で貴重なものの鑑定書にも使われるようになり、やがて「折り紙付き」は良い品の保証書という位置づけになりました。 (『できる人の語彙力が身につく本』25ページ) 相手の評価に対して、「○○さんがおっしゃるなら間違いないですね」でももちろんいいのですが、「○○さんの折り紙付きなら間違いないですね」とすると、ちょっと知的ですよね。 ちなみに、似た言葉に「お墨付き」がありますが、この「お墨」とは権力や権威のある人が墨で書いた保証書のことだそうです。 忸怩たる思い 国会答弁ぐらいでしか聞いたことがない言葉ですが…忸怩(じくじ)とは、自分自身の言動を恥じること。「忸怩たる思い」とすると、悔しく情けない気持ちを表します。 失敗をしたり迷惑をかけたりしたときに使うにはハードルが高く、「申し訳ありません」「恥ずかしいです」というほうがかえって気持ちは伝わることもあります。 反対に、ちょっとくだけたシーンで「忸怩たる思いです!」と使えば、ユーモアのセンスと知的さを印象づけられるかもしれませんね。 <番外編>間違いやすい慣用句、ことわざ 最後に「間違いの多い慣用句」として書かれていたものをいくつか挙げておきます。 ・誤)的を得る→正)的を射る ・誤)暇にまかせて→正)暇に飽かせて ・誤)熱にうなされる→正)熱に浮かされる ・誤)押しも押されぬ→正)押しも押されもせぬ ・誤)足下をすくわれる→正)足をすくわれる (『できる人の語彙力が身につく本』111~114ページより一部抜粋) 本書では誤りの理由やこれらの言葉の意味も紹介されていますので、「間違って使っていた!」という人はぜひ読んでみてください。 日本語って難しい。でも興味を持つととても楽しい。言葉を読み流しっぱなし、聞き流しっぱなしにせず、気になった言葉は控えておいて自分で使ってみる。そんな言葉の貯金=語彙を増やしていきたいものです。 >>Kindle unlimited、99円で3カ月読み放題キャンペーン中! Source: 三笠書房
ライフハッカー・ジャパン編集部