長塚京三、78歳でのリアルな“終活” クルマ好きも免許返納「人に迷惑をかけてもいけない」
パリ大学留学、仏映画でデビュー
俳優の長塚京三(78)が映画『お終活 再春!人生ラプソディ』(5月31日公開、脚本・監督香月秀之)でフランス帰りの画家役で出演した。長塚はパリ大学に留学し、仏映画『パリの中国人』(1974年)で俳優デビューを飾ったキャリアを持つ。本作とそのパリ時代を語った。(取材・文=平辻哲也) 【写真】映画『お終活』出演の“92歳俳優”、まさかのスクワットに会場騒然 『お終活―』は『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』(21年)に続く第2弾。今回は「再春」をテーマに、高畑淳子が主演。シャンソン歌手としてステージに立つという、若い頃の夢に挑戦する姿が描かれる。 長塚が演じたのは、シニア向け分譲マンションに住む画家、五島英樹。監督の香月とはWOWOW『マグマ』(12年)、テレビ東京『逆転弁護士ヤブハラ』シリーズ(16年)、テレビ朝日『深層捜査』シリーズ(19年)でタッグを組んでおり、当て書きで決まったキャスティングだ。 「当て書きというのは、監督が僕の演技を買っているわけじゃないんだね」と冗談を飛ばす長塚。「五島という人はアーティストで、ちょっと困った人なんですよ。自分の過去の過ちも潔く謝らないし、その辺はちょっとどうなのと思ってしまいましたが、多分その辺は見る方がお決めになることでしょう」 長塚がパリに留学したのは演劇サークルに所属していた早稲田大学在学中だった。 「うちの家庭は極めて質素で、パリに留学させる余裕はなかったんです。ちょうど時代は学生紛争の最中で、大学に行きたくても、ロックダウンされてしまったので、そんな中で僕は追い込まれちゃったわけですよ。僕としては、2年間行っているうちに何とかしようと思ったんだね」 パリ大学と言えば、名門中の名門。現在は統廃合され、「ソルボンヌ大学」との名称で知られている。 「1年通う講座があったんですが、それをクリアするのに3年かかりました。2年に取ったコースも高度で苦労しました」 パリと言えば、華やかな雰囲気もあるが、実際の生活はどうだったのか。 「親は精いっぱいのことをしてくれましたが、パリでの生活は苦しかった。下宿と大学の往復だけで、外食できる状態じゃなかったので、シャンゼリゼなど華やかな場所には行っていません。おぼつかないながらも通訳のアルバイトを始めましたが、ビジネスの専門用語にはまいったし、『新婚旅行で来たので、観光地を案内してください』と言われても、そんな場所は知らないんです。それでも、最後の方は通訳で食っていけるかなとは思いましたけど」 そんな時に転機が訪れる。1974年、ジャン・ヤンヌ監督の映画『パリの中国人』のオーディションを受けて見事に合格した。中国人に占拠されたパリを、民衆が戦わずして解放するという寓話的な物語で、中国軍の若き将軍を演じた。 「早稲田大学は中退してしまったし、このまま日本に帰っても、就職もできないだろうと思ったんです。その頃は俳優になろうと思っていたわけではないんですが、もう俳優になるしかないと思っていました。フランス映画の東洋人と言えば、ナゾの中国人の役が多かったのですが、この映画の役はそうでもなさそうだったので、受けたみたわけです」