俳優・前田敦子が語る仕事観「辛い状況でもハッピーな要素をみつけることが大切」
数年前から三島監督と「いつか一緒に作ろう」と話していた前田さんは、監督が自主制作でこの物語を作ると聞き、主演のオファーを受けた。飛び込みたい気持ちはあったものの、「今の自分にそれができるか」という葛藤を抱えていたと振り返る。 「子供がまだ小さいので、あんまり重い作品を自分で演じられる覚悟がなかったんです。万全の準備ができなくて、『やっぱ無理かも』って心が折れちゃったらいちばん失礼じゃないですか」。 そんな前田さんの心情を察するかのように、三島監督はずっと待ち続けた。 「監督は私をずっと待っていてくれたので、時間をかけて考える機会があったのはありがたかったです。このように向き合える作品は滅多にありません。 監督が私に何かを託そうとしている感情が伝わりました。自分が向き合い続けてきた非常にパーソナルなことを私に託してくれていると」。
『一月の声に歓びを刻め』は、現代の人々に「生きることの大切さ」を伝えることを目的として制作された。この映画の中心人物であるれいこは、性暴力の被害者でありながら、不屈の精神で生き抜く強い女性だ。三島監督は、れいこの役をたくましさを持つ俳優によって演じられることを望んでいた。 「監督が私をたくましく思ったのは、普段から感情を表に出さない性格だからかもしれませんね。テレビに出演しているときでも、友達と一緒にいるときでも、家族と過ごしているときでも、常にこのままです(笑)。 それが逆に『すごいね!』と言われることがありますが、ただ嘘をつけない、不器用なだけなんですよね」。
過酷な撮影現場で見つけた俳優業の面白さ
「常に自然体」というが、かつては国民的なアイドルとしての栄光を背負っていた前田さん。何かしら世間と自身の心のギャップを感じていたはずだ。当時のイメージについて思いを語ってくれた。 「全然、そんなことないですよ。たしかに、そう見えたこともあるかもしれませんが、仲間の存在があったからこそ、アイドルとしての輝きを放つことができました。一人だったら、おそらくアイドルにはなれなかった。 だから、一人で多くの役割を担うことには、いまだに慣れません(笑)。しかし、役者は仲間との連携やチームワークが大切で、それはアイドル時代から培った部分かもしれませんね」。