中国の習近平国家主席

習近平国家主席率いる中国軍が、台湾にとって重要な記念日に大規模な軍事的威嚇を仕掛けてきた。「中華民国建国113年」を記念する双十節（建国記念日）を迎えた10日朝までに、台湾周辺で軍用機27機、軍艦など14隻を活動させたのだ。昨年の双十節に比べると、中国軍の規模は大幅に拡大している。識者は既成事実を積み上げる「サラミ戦術」が進行しているとみて、中国の威圧エスカレートに警戒を呼び掛けている。 【写真】中国の軍事的威嚇には無人機も使われていた ■頼総統、現状堅持姿勢を強調 「（中華民国と中華人民共和国は）互いに隷属していない」「中華人民共和国には台湾を代表する権利はない」 台湾の頼清徳総統は10日、台北市で開かれた式典で、こう強調した。 頼氏は5日の祝賀イベントでも1911年に始まった辛亥革命で誕生した中華民国は、49年に成立した中国共産党の中華人民共和国よりも歴史が長いことを指摘し、台湾の現状堅持の姿勢を強調していた。 毅然（きぜん）とした姿勢を示す台湾に対し、中国は軍事的な圧力を強めた。 台湾国防部によると、9日午前6時から10日午前6時にかけて、無人機を含む軍用機延べ27機と、軍艦9隻、公船5隻が台湾海峡周辺で活動した。軍用機のうち15機は台湾海峡の暗黙のライン「中間線」やその延長線を越え、台湾の北、中央、西南の空域に進入した。 昨年の同時期に比べると、中国の威嚇レベルは格段に上がっている。2023年の10月9日～10日の同時間帯には軍艦4隻が活動していただけだった。 頼氏の演説に対しても、中国外務省は猛然と反発した。 中国外務省の毛寧副報道局長は10日の記者会見で、「頑迷な台湾独立の立場と政治的私欲のために台湾海峡の緊張を高めるという邪悪な意図を再び暴露した」と非難し、「中華人民共和国は全中国を代表する唯一の合法政府だ」「台湾に主権は存在しない」と主張した。 反発を強める中国に対し、米国のカリーヌ・ジャンピエール大統領報道官は10日、「軍事演習の口実に利用することは正当化できない」と牽制（けんせい）した。 現在の情勢をどうみるか。

元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は「中国軍の規模が昨年から拡大しているのは、徐々に既成事実をつくって現状変更に向かうサラミ戦術の一環だろう。米大統領選や、日本の衆院選による政治的空白を狙った可能性もある。今後も節目節目で中国による活動のエスカレートを警戒しなければならない」と語った。