『情熱大陸』のナレーターが明かす“人を引き寄せる秘密”と生田絵梨花の回での“ダメ出し”
「いいや、会社を辞めちまえ」
就職して3年が過ぎた21歳のころ。 《CMナレーター養成講座開講 受講生募集》 通勤で毎日乗っていた東横線で、こんな中づり広告を見かけた。すると、それまで忘れていた“声”への情熱が一気に蘇ってきた。 「ナレーターという文字がパーッと目に飛び込んできたんです。そうかナレーターか。勉強してみたいなぁと」 窪田さんは夕方4時55分に仕事が終わると、週3回、電車を乗り継いで銀座まで通った。さぞや楽しく学んだのかと思いきや、ひどく落ち込む毎日だったという。 「山梨のなまりがすごくて。アクセントの違いもあるけど、決定的にダメだったのは、母音の無声化ができないんですよ。僕は母音まで発音しちゃうからカクカクした感じに聞こえて、美しくないんです」 しかも受講生は俳優やアナウンサー志望の人ばかり。舞台や芝居などの話にもついていけない。 「みんなが話していることがわからなくてガーンときているのに、先生に怒られるでしょう。もう、先生の前でしゃべるのが嫌になっちゃった。非常につらかったけど、それでもやるしかない。一生懸命勉強して、微妙な音の違いがわかるようになって、やっと直すことができたんですね。今でもアクセントには苦手意識があるから、迷ったらすぐ調べるようにしています」 1年間の講座が終わると、テレビCMのナレーションの依頼が来た。窪田さんは会社を休んで収録に臨んだ。 「この放送が気になったら、××生命にお入りください」 自分ではうまくできたと思ったのに、オンエアされたCMを聞いて愕然とした。 「がっかりしたんですよ。下手くそだなって。でも、ディレクターたちの狙いは、いわゆるプロのしゃべりじゃなくて、素人っぽいしゃべりが欲しかったみたいで」 しばらくするとまた依頼が来た。だが、仕事が休めずに断ると、「じゃあ他の人に回す」とあっさり言われた。 そのとき、窪田さんは大きな決断をする。 「もし、仕事が来たのが1回だけなら、そのままだったかもしれないけど、また来たことで、気持ちが変わったんです。『いいや、会社を辞めちまえ』と。僕ってね、意外と単純な性質で、落ちたら危ないから川の深さを測るんじゃなくて、飛べるかどうかわかんないけど、飛んでしまえっていう、いいかげんなところがあった(笑)。それが幸いしたんでしょうね」 家族には相談しなかったのかと聞くと、そもそも両親には何も伝えていなかったという。辞表を出すと会社から山梨の実家に電話がかかってきたが、父親はこう答えてくれたそうだ。 「息子がやりたいことに口ははさみません」