FUJI&SUN’24 初夏の山麓に広がる音空間 富士で野外フェス 32組出演
富士市の「富士山こどもの国」で11、12の両日、野外フェスティバル「FUJI&SUN’24」(実行委員会主催)が開かれ、大中小の3ステージに32組が出演した。初夏の光に恵まれた初日、高地らしいひんやりとした空気に包まれた2日目。富士山を間近に望む会場で、のべ6500人が幅広いジャンルの音楽を楽しんだ。 幕開けを務めたのは、富士市の吉原地区の商店主や祭り仲間で結成した「TOP DOCA&吉原祇園太鼓セッションズ」。地元の祭で用いる太鼓や鉦[かね]をバンドサウンドに取り込み、ファンキーなギターやサックスが「おはやしグルーブ」を先導した。
ベテランの「クレイジーケンバンド」は大ステージのトップバッター。ホーンセクション3人を含む9人と共に現れた横山剣が、ソウルやファンクの要素が満載の楽曲を、こぶしを回して歌い上げた。ヒット曲「タイガー&ドラゴン」も演奏し、会場を盛り上げた。
シンガー・ソングライター優河は「魔法バンド」とともに親密な歌声を届け、ブラジル人ギタリストのファビアーノ・ド・ナシメントは7弦ギターで、ドラマー石若駿と即興を交えたアンサンブルを展開した。 初日夜はロックバンドが主役だった。「くるり」は伊東市の「伊豆スタジオ」で録音した最新アルバム「感覚は道標」からの楽曲を冒頭に披露し、Suchmosの河西洋介をフロントに据える5人組「Hedigan’s」は70年代ロック色が濃厚な骨太なサウンドを聴かせた。「never young beach」はキラキラとしたギターの単音フレーズに乗せ、短編小説のような楽曲をテンポよく繰り出した。 石野卓球(静岡市出身)は1時間半ノンストップのテクノDJで深夜まで残った客を踊らせた。
2日目午前は、内外の新進音楽家が独自色あふれるサウンドを競った。 湘南の3人組「maya ongaku」はギターやベースがたゆたうように2コードを循環させ、夢心地の音空間を作り上げた。インドネシアの2人組「KUNTARI」は6弦ベースとドラムキットから「音の塊」を客席に放出した。黒人音楽の影響を強く受けた東京のシンガー・ソングライターHIMIは、細く高く伸びる声を残響が心地よいギターに乗せた。 午後のハイライトは、ラッパーたちの連続出演だった。名古屋市が拠点のCampanellaが歯切れのいいラップを見せつけ、東京の鎮座DOPENESSは客席を巡りながらのラップで見る者に強烈なインパクトを与えた。声質が三者三様の「Dos Monos」はギター2本とサックスの生演奏を導入し、ラップとノイズの混沌[こんとん]を生んだ。
シンガー・ソングライターの柴田聡子はギター弾き語りで新作アルバム「Your Favorite Things」収録曲を次々演奏した。乾いたトーンのギターを奏でながら複雑な起伏のメロディーを歌い上げる姿に、客席からため息が漏れた。 2日間の締めくくりは21年の出演時に続き森山直太朗だった。フィドル、チェロ、バンジョーが加わったバンドを従え、ファルセットと地声を自在に操る高度な歌唱技術で一体感を生んだ。「生きてることが辛いなら」の弾き語りで終幕。観客の拍手はやむことがなく、ステージの解体作業が始まってもそれが続いた。