『笑うマトリョーシカ』亜里沙の重なる“狂気の笑顔” 最終話直前で真のハヌッセンが急浮上
“怒涛の展開”という言葉がこれほど似合うドラマはないだろう。TBS金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』は、まさに息もつかせぬ展開の連続だ。視聴者の心拍は加速するばかりだが、真相はいまだ霧の中。再び愛媛県愛南町を訪れた道上(水川あさみ)は、浩子(高岡早紀)の波乱万丈な人生を知る。そして第10話では、清家(櫻井翔)家の背後で糸を引くハヌッセンが、本当に浩子なのかの答え合わせが始まった。 【写真】場面カット(複数あり) 清家は「首相公選制」実現に向けた憲法改正案を提案。官房長官としては前例のない大胆な行動に、政界は騒然となっていた。 一方、浩子は、論文を鈴木(玉山鉄二)に送ったのは自分ではないと主張する。論文を送った人物を追う道上は、情報を集めるべく浩子の現夫・小松(堀内正美)を訪ねていた。 道上は、情報収集をする中で、論文を送付した可能性がある人物としてヘルパーの田所(和田光沙)に目をつけていた。同時に、長年佐々木(渡辺大)が清家の動向を浩子に密告していた事実が浮かび上がり、複雑に絡み合う人間関係の闇が一層深まっていく。 清家を取り巻く人々の情報を丹念に集めた道上は、驚くべき事実を暴露する。 まず、浩子と清家の関係はすでに断絶されていたことが明らかに。清家は代議士に就任した年、突如として浩子との縁を切っていたのだ。この出来事が浩子の精神を蝕み、小松の病院に至る原因となった。さらに、浩子は病により限られた余命であるという悲痛な事実も浮かび上がる。 しかし、それを上回る最大の衝撃は田所の正体だった。道上は、田所が実は真中亜里沙であることを突き止めていたのだ。亜里沙は親の旧姓を巧みに利用し、整形で変貌を遂げていた。しかしそんな亜里沙のことを、彼女の母親が実の娘であると見抜いたのだった。 「ずーっと私が一郎くんを支配してきたんです。お二人に気づかれないように、こっそり会って」 当時、鈴木と浩子に疎まれていることを鋭く察知した亜里沙は、一郎を巧みに操り、自らの失踪を緻密に演出していた。彼女は長年にわたり、清家を影から巧妙に操ってきたのだ。道上の表情が次第に強張る中、亜里沙は淡々と話を続ける。 「全部、私の書いたシナリオ通り。そのはずだった。なのに3年前、突然彼は私を捨てた」 この一連の会話では、学生時代の亜里沙を田辺桃子が演じ、現在のヘルパーとして働く亜里沙を和田光沙が演じている。これまでも、本作では登場人物の回想シーンと現在の時間軸で2人の役者が一人のキャラクターを演じる場面が「似すぎている」と度々話題になっていたが、第10話はその手法の真価が最も発揮された回と言えるだろう。特に、今回の“2人の亜里沙”の描写は圧巻だ。田辺演じる学生時代の亜里沙と、和田演じる現在のヘルパーの亜里沙。二人の演技が絶妙にリンクする瞬間は背筋が凍るほど。ニカッと歯が見える“狂気の笑顔”を、視聴者は固唾を呑んで見入ったことだろう。 「絶対に見つけ出してくださいね。3年前に、わたしから一郎くんを奪った人を」 3年前、突如として清家に見捨てられた亜里沙。彼女は再び浩子に近づくも、その眼差しから、このハヌッセンが別人物だと悟っていた。驚くべきことに、鈴木を狙った事故は亜里沙の仕業ではなかったのだ。誰かが巧妙に彼女に罪をなすりつけ、鈴木を排除しようとしたのである。最終回を目前にした今、真のハヌッセンの存在が急浮上してきた。 さらに道上は、浩子から渡されたBG株事件にまつわる証拠のテープを再生し、政界を揺るがす大スクープを掴む。鈴木の父と諸橋とのやり取りの後、「紹介したい男がいる」と言って入ってきたのは、なんと羽生総理(大鷹明良)だったのだ。「くれぐれも、内密に」という言葉でテープは突然切れる。 驚愕の連鎖が止まらない第10話だったが、まさかここで最後の一撃が。ドラマのラスト、道上は突如として清家から呼び出しを受ける。困惑する彼女の前に現れた清家の口から放たれたのは、予想外の言葉だった。 「道上さん、僕のブレーンになってくれませんか?」 清家の言葉の意図に、観ているこちらも道上と一緒に困惑してしまう。清家の裏にいる真のハヌッセンは今、高らかに笑っているはずなのだから。すべての謎が明かされる最終回へ、物語は息もつかせぬ勢いで突入していく。
すなくじら