現代のダンスを牽引するNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)、5年ぶりの日本公演「皆さまの思考を刺激し忘れられない体験を」
全5作品に出演する髙浦幸乃の活躍に注目
続いてマイクを手にした髙浦幸乃は、「日本の観客の皆さんがどんなふうにこれらの作品を観てくださるのか、興味深く思います。お客さまとお話しできることがあれば、質問したいです」。ドイツのバレエ学校に留学し、2013年よりNDT2、2015年よりNDT1で活躍している彼女は、カンパニーの中ではすでにベテランの世代だ。数々の作品のクリエーションに携わってきたが、今回上演する5作品全てに出演するという。 「そのうち3作品でオリジナルキャストとして携わっています。『La Ruta』ではガブリエラの新作のクリエイションに初めて関わりました。最初の3週間、キャスト全員がスタジオに朝から晩までこもり、大道具、小道具、衣裳がばーっと並べられた空間で、ワークショップの形でアイデアを出し合った。彼女から出されたお題に対して即興で動いていく。ダンサーたちの個性が詰まった作品だなと思います」と髙浦が述べると、唐津は「福士宙夢さんもオリジナルキャスト。日本人ダンサーふたりがほぼ主役のような形です」と補足。「日本のホラーにインスピレーションを得ている」とも。ますます興味をそそられる。 日本初登場となるシャロン・エイアールによる『Jakie』についても、髙浦は「シャロンさんの魅力が作品から滲み出てくる感じがある。彼女の世界観を日本のお客さまにも楽しんでいただけたら」と訴える。「NDTは常に進化、変化をしてきたカンパニー。エミリーさんの、そのクリエイティビティにすごく注目しています。彼女が招待する振付家の中には、演劇やサーカス出身のクリエイターもいて、彼らとのコラボレーションも多く行われています」と、NDTのますますの充実ぶりを実感しているようだ。 長くカンパニーを率いたキリアンの時代ののち、芸術監督はライトフット、モルナーへと引き継がれたが、NDTの革新性、創造力は失われるどころか、新たな道を切り拓くべく、より貪欲に前進する姿勢を見せる。続いて行われた質疑応答でも、現在のNDTの状況、取り組み方についてさまざまな質問が寄せられた。 カンパニーで振付を手掛ける芸術監督が続いた中で、モルナーは監督の仕事に専念。そのことについて彼女は、「多くのカンパニーは長年、ひとりの振付家の作品を発表していくことを基本の形としていた。NDTのような大きい組織をどのように運営し、業界全体でどのようにさまざまな振付家を支援していくかということを考えると、ひとりの振付家ではまわっていかない。NDTのアイデンティティはひとりの特定の振付家の声ではなく、このダンサーたちの技巧その表現の幅広さにあると考えます。もちろんバランスも考え、キリアンの作品も毎シーズン上演していますが、それと並行し、いわば次のイリ・キリアンを探す、その橋渡し、支援ができるようなカンパニーとしてやっていきたい」と考えを述べた。 モルナー率いる現在のNDTの魅力のみならず、今後のダンス界の可能性をも実感させる、充実の日本公演となるだろう。 取材・文:加藤智子 <公演情報> 「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024」 【上演プログラム(各公演3作品を組み合わせて上演)】 ・『Jakie』振付:シャロン・エイアール & ガイ・ベハール ・『One Flat Thing, reproduced』振付:ウィリアム・フォーサイス ・『Solo Echo』振付:クリスタル・パイト ・『La Ruta』振付:ガブリエラ・カリーソ ・『I love you, ghost』振付:マルコ・ゲッケ 【群馬公演】 2024年6月30日(日)16:00 会場:高崎芸術劇場 大劇場 【神奈川公演】 2024年7月5日(金)19:00・6日(土)14:00 会場:神奈川県民ホール 大ホール 【愛知公演】 2024年7月12日(金)19:00・13日(土)14:00 会場:愛知県芸術劇場 大ホール