日本でネット選挙が盛り上がるには何が必要? 東京でシンポ
インターネットによる選挙運動解禁という観点から今夏の参議院を振り返るシンポジウムが11日、東京の明治大学で開かれた。日本でネット選挙が普及していくための課題として、識者らは「有権者もネット選挙の『プレイヤー』という自覚を持って」と呼びかけた。 同大学情報コミュニケーション学部の清原聖子准教授の研究室が主催。日米韓のネット選挙について共同研究してきたメンバーを中心に研究結果を発表し、文教大学人間科学部准教授の前嶋和弘氏、慶応義塾大学総合政策学部専任講師の李洪千氏、情報通信総合研究所グローバル研究グループ主任研究員の清水憲人氏、朝日新聞記者の竹石涼子氏が報告を行った。その後、竹石氏の司会の下、清原氏も加わって討論会が行われた。
参院選でのネット選挙はどうだった?
まず、今夏の参議院選で始まったネット選挙運動はどうだったか、について各氏が見解を発表。やや盛り上がりには欠けた、という共通認識は持った上で、清原氏は「スタートとしては良かった。ネット情報が役立ったという学生もいて、若い層には少しずつ浸透しているのでは」、清水氏は「個人的には面白かった。有権者の側に準備ができていなかった。候補者もネット選挙に対して手探りで入っていたが、有権者のリアクションがあまりなかったので、従来型の選挙に注力していく人たちもいたのではないか」と、比較的前向きな総括を述べた。 それに対し、前嶋氏は「不幸なスタートだった。オバマ氏が当選した08年の米大統領選や、小泉郵政選挙、民主の政権交代選挙のような盛り上がる選挙であれば状況は変わった」、李氏は「ネット選挙が有権者のものになっていなかった。1億2000万人が選挙運動できるようになったにも関わらず、何の問題もブームも起きていない。逆に政治家に、1億2000万人を十分コントロールできるんだ、という印象を与えた」とやや厳しい見方を示した。
なぜ日本では政治的関心が高くない?
日本に先んじて2012年にネット選挙が解禁された韓国では、大統領選などで大きな盛り上がりを見せた。背景として、韓国の若い世代は政治の話題を酒の肴にして飲む、など政治的関心の高さが紹介された。李氏は、その理由について、大学の学費の問題や軍隊生活に関わる対北朝鮮政策など、若い世代の生活に関わる政治問題があると指摘。清原氏もアメリカの事例を引いて、イラク戦争からの撤退問題や学生の就職問題など、やはり若い世代に身近な問題がある、と語った。 一方、日本では政治的な関心がなぜ高くないのか、について、前嶋氏は、自分が投票することで国を変えられるという「政治的有効性」を感じている人たちが少ない、というデータを紹介。日本独特のSNS風土の観点から分析したのは清水氏で、「日本はSNSでも『空気』を読む」と語り、政治的な話題を取り上げることで周囲にネガティブな印象を持たれることを恐れ、政治を語りにくい環境があると指摘した。
今後のネット選挙に必要なこと
今後、日本でネット選挙が盛り上がるためには何が必要なのか。この課題について、李氏と清原氏は「政策がわかりにくいとか、政策の選択肢が少ないとか、有権者が受け身になっている。有権者も選挙運動ができるということは、自分も『プレイヤー』になっているということ。応援するだけでなく、自分から何を主張するのか、積極的に行なっていかないといけない」と、政治家やメディアだけではなく、有権者側の「意識変革」を求めた。