「ドクターストップで休養も」田中美里『あぐり』後の葛藤「監督、共演者、医師の支えもあって戻ってこられた世界」
── 言葉を励みに、芝居を続けたわけですね。 田中さん:でも、最終的に動くのもままならなくなって、「はい、3歩前に歩いて」と言われてようやく足を踏み出すようなこともありました。それでも「全然、大丈夫だよ」と、粘り強く見守ってくださっていましたね。 共演者の方たちもそうそうたる役者さんがいらしたけれど、みなさん何も言わずにいてくれた。そのとき監督に「誰もあなたに対して不満を言わないの、なぜだかわかる?みんな同じ経験をしているからだよ。この先そういう後輩が必ず現れると思うから、そのときは痛みがわかる女優さんになってね」と、言われたのが強く心に残っています。
■医師から本気の言葉に「自分をいたわろうと」 ── 一時期休養に入られています。当時はどんな状態だったのでしょう。 田中さん:時代劇の後も主演映画の撮影が控えていたけれど、だいぶ苦しくなっていて、自分ではどうにもできない状況でした。お医者さまにそう話したら、「明日から仕事を休んでください」と言われて。でも映画の撮影が決まっている。そうはいかないと伝えたら、お医者さまが「事務所の人と話してドクターストップをかけます」と言ってくださった。もちろん事務所の方が悪いわけではありません。私自身のなかに「もっと頑張らなきゃ」「迷惑をかけちゃいけない」「休むなんて」といった気持ちがあったんです。でも、そこから3か月間お休みをいただいて、復活することができました。
── 快方に向かうきっかけとなったものとは? 田中さん:やはりお医者さまがそこまで言って守ってくれようとしたことが、私にとってはいちばんの薬になりました。休むにしても「ただ休むだけじゃなくて、いままでやりたくても我慢してきたことをやりなさい。自分が本当に楽しいと思うことをやりなさい、それが薬だから」と話してくださった、お医者さまの言葉も大きかったですね。これはやっちゃダメ、あれはやっちゃダメと、自分で自分を抑えつけていたところがあったのだと思います。