経常収支9月は1兆7171億円の黒字、予測下回る 貿易赤字で
財務省が11日に公表した9月経常収支は1兆7171億円の黒字となり、2023年2月から続く連続経常黒字を20カ月に更新した。ただ黒字幅はロイター予測の3兆2628億円を大きく下回り、2023年3月以来の対前年黒字幅縮小を記録した。 財務省は、9月の経常黒字幅の縮小は輸入コスト増加に起因する貿易収支の赤字によるものとした。貿易収支は前年同月から6912億円悪化し3152億円の赤字となった。赤字は3カ月連続。経常黒字をけん引してきた第一次所得収支の黒字幅が縮小したことも効いた。第一次所得収支は前年同月から4660億円減の2兆7745億円の黒字となった。黒字の減少は3か月ぶり。 9月の第一次所得収支の黒字幅減少について財務省担当者は、7ー8月に海外証券等投資の配当増が集中したことによるもので「期ずれによる一時的な動きではないか」としている。 経常収支は2023年1月に2兆0014億円の赤字を記録した後は、円安と食料品、エネルギー、資源価格の高騰などによる貿易赤字にも関わらず、海外への証券投資や直接投資からの収入に支えられ、黒字を続けている。 農林中金総合研究所・理事研究員の南武志氏は、足元では円安に注目が集まっているが、日本の対外フィスカルポジションである莫大な所得黒字は、経常収支における貿易収支の赤字を補ってあまりあるものだが、将来何らかのきっかけで円高に反転するトリガーになりえるという。 「今は貿易収支の部分だけ切り取ってフォーカスされる円安だが、日本の対外資産の蓄積をみると将来的に円安リスク一本やりではいけないことが確認できる」という。 *アナリストコメントなどを追加しました。