コンクリート打設が進む足羽川ダムの工事現場＝6月、福井県池田町小畑（国土交通省足羽川ダム工事事務所提供）

　2004年7月に起きた福井豪雨を契機に、国が福井県池田町で整備を進める足羽川ダムの本体工事がピークを迎えている。近年全国で大規模な豪雨災害が頻発する中、一日も早い完成を目指し夜間も作業。コンクリート打設の進捗は33％（6月末現在）で、ダム堤体（本体）は高さ96メートルのうち26メートルまで進んでいる。国の推定では、福井豪雨時に足羽川ダムがあった場合、堤防決壊地点の水位は当時より90センチ低下し、越水はなかった。 【動画】工事中の足羽川ダムを空中から撮影 　足羽川ダムは、利水には使わない治水専用のダム。洪水時だけ一時的にゲートを閉めて水をため、安全な量を下流に流す流水型としては国内最大規模となる。堤頂の長さは351メートル、総貯水容量はサンドーム福井100杯分の約2870万立方メートル。既に完了した足羽川河床掘削の効果と合わせると、福井豪雨時の堤防決壊地点での水位は2.5メートル低下すると国は推定している。29年度の完成予定。 　1967年に国の予備調査が始まった足羽川ダムの整備は紆余曲折を経た。当初計画していた同県美山町（現福井市）での建設は、反対運動により97年に白紙に。99年には池田町の部子川（へこがわ）に造る代替案が公表され、甚大な被害が発生した2004年の福井豪雨によって、ダムの必要性を指摘する声は強まった。足羽川の下流に位置する福井市の酒井哲夫市長（当時）は06年、池田町の杉本博文町長に建設への理解を求め、町長は受け入れを表明した。 　14年に県道の付け替え工事、20年にダム本体工事が始まった。樹木を伐採し、基礎掘削で山肌を削って固い岩盤を出し、22年にコンクリート打設に着手。現在は昼間250人、夜間50人体制をとり、急ピッチで作業を進めている。洪水時に水海川からダム湖へ水を引き込む水海川導水トンネルの掘削は、全長4717メートルの84％に当たる3971メートルまで進んだ。 　国土交通省近畿地方整備局は昨年6月、26年度としていた完成時期が3年遅れて29年度となり、事業費も1200億円増え、約2500億円に倍増すると公表した。国交省足羽川ダム工事事務所は「福井豪雨は事業が加速する契機となった。一日も早く完成させたい」としている。