中華圏の女性に大人気の「三喜雑貨」。老舗アパレル企業の業態転換と覚悟
縮小する国内アパレル業界において、巨大資本の存在感が大きくなっている。 同業界の市場規模は、2022年に前年比105.9%の8兆591億円で、2年連続で前年を上回ったものの、コロナ禍前の水準には戻っていない(矢野経済研究所の調査より)。ピークだった1991年の15兆円と比べると、長期的に低落傾向にあることがわかる。 ■中堅アパレルの課題と勝ち筋 そんな中、年々顕著になっているのが、高級ブランド世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)やユニクロを展開するファーストリテイリングのような巨大資本の存在感だ。 LVMHは2023年12月期の通期決算で、売上高が前期比9%増の861億ユーロ(約13兆7900億円)と過去最高を記録。ファーストリテイリングも同年8月期連結業績で、2021年8月期以来3期連続で過去最高業績を更新している。高価格帯、そして手頃な価格帯の両方で巨大資本が台頭している。 そんな「板挟み」とも言える状況のなかで、将来の展望が描きにくくなっているのが中堅以下のアパレル企業、そして巨大資本に属していないつくり手たちだ。 「巨大資本が主役となった世界では、どうしても多くのブランドやつくり手が埋もれてしまいます。巨大資本や上場企業では、短期間で成果を出すことや前年対比での成長が求められることが多く、確実に効率的に売れる製品でなければ、世に出すわけにはいかないからです」 こう語るのは三喜商事(東京・港区)の熊谷嘉延社長だ。三喜商事は1956年の設立以来、ヨーロッパを中心としたインポートファッションを日本にいち早く紹介してきた老舗アパレル企業だ。「アレキサンダーワン」「JW アンダーソン」「オールドイングランド」といったブランドを日本で展開してきた。 三喜商事もピーク時には年商は100億円を超えていたが、現在では71億円(2023年6月期)に落ち着いている。市場規模が半減しているアパレル業界のなかでは健闘しているが、先行きは決して楽観できるものではない。そんな中、熊谷社長はどこに勝ち筋を見つけたのだろうか。 ■中華圏で好まれるデザインに 三喜商事は2024年3月、ラフォーレ原宿にセレクトショップ「三喜雑貨」をオープンした。その狙いについて熊谷社長は次のように話す。