「向こうから誘ってきた」子どもの“性的関心”利用し加害行為へ…卑劣すぎる小児性愛者の言い訳
知識なくても「誘ってきた」子どもへの性加害者“特有”の歪み
そのなかでも子どもへの性暴力をやめられない人たちには、ほかに見られない独特の歪みがあると感じます。ここでは、私がクリニックで実際に加害経験のある当事者から聞いたものを挙げていきます。 認知の歪みとひと口にいっても、いくつかのカテゴリーに分けられますので、そのうちのひとつを紹介しましょう。 ●被害者の自己責任にする ・あんな暗い夜道をひとりで歩いているから、触りたくなったんだよ。 ・子どものほうから誘惑してきたから、自分はそれに応じただけ。 ・大人とセックスしたがる子ども、セックスが好きな子どももいるからね。 自分が起こした問題行動の原因が、ほかならぬ被害者にある──これは子どもに加害した者に限らず、多くの性暴力加害者に共通して見られるものです。 こちらをチラチラ見ていたから、お酒に酔っていて隙を見せたから、痴漢が多いという噂(うわさ)の車両に乗ってきたんだから……と性倒錯の種類によってその内容は異なり、それぞれにバリエーションは豊富にあります。 年齢にもよりますが、被害を受けたなかには「自分が何をされたかわからない」という子どもが少なくありません。性についての知識がまだないので、性的接触による加害行為に晒されても、はっきり被害を認識できないのです。 彼らはそこにつけ込んで加害するにもかかわらず、自分は誘われたという捉え方をしています。知識がない子どもたちが「誘惑する」「セックスが好き」というのは論理的に無理があると誰でもわかるはずです。 また被害者の「落ち度」を理由にするのも、認知の歪みのひとつです。実際には落ち度でもなんでもなく、被害者はそこをたまたま歩いていただけだったり、たまたまその服を着ていただけだったりするのですが、加害者の認知では「性的接触をしていい理由」になります。
子どもの「性への関心」を利用して…
子どもの振る舞いを理由に、子どももセックスしたがっている、子どものほうから誘ってきたという認知については、次のようなケースがあります。 〈私が子どもに手を出したなんて、とんでもない。子どものほうから「おじちゃん、ちんちん見せて」といってきたんです。あのくらいの年齢の子だって、エッチなことに興味津々なんですよ。親や先生にはいわないだけで。〉(C 男性・55歳) 小学校低学年の女子児童に何度も口腔(こうくう)性交を強いた男性の弁明です。子どもがその行為のきっかけを作り、自分は子どもの求めに応(こた)えただけというのが、彼の認知です。 個人差は大きいですが、子どもにも多かれ少なかれ性的関心はあるでしょう。しかし、それは大人と同じものではありません。それぞれの成長段階に応じて、変化していくものです。 「性的関心がある」と「性的接触をしていい」のあいだには、大きすぎる飛躍があります。それを歪んだ認知によって一瞬で飛び越えて、彼らは子どもに対し行動を起こします。 子どもらしい好奇心を利用し、ときには誘導して子ども自身が望んでいるように思い込ませたうえで、ひとりよがりな欲望を果たすのですから、卑劣(ひれつ)としかいいようがありません。 (続)
斉藤章佳