エンジンの130年ぶり技術革新なるか「いい火花」を支える点火プラグが不要に?
「良いガス」「良い圧縮」「良い火花」の第三弾は火花の話。前2回をざっと振り返るところから始めたい。良いガスの話では「エンジンが調子よく回るには、理論空燃費(14.7:1)がベストだ。燃費を良くするためにこれを薄くしようとすると色々面倒なことが起きる」という説明をした。いい圧縮の話では、圧縮で大事なのは空気の分子量だから上手く冷却できると圧縮の天敵であるノッキングを避けて効率が上がるという説明をした。良い火花の話は、そうやってがんばって混合し、圧縮した混合気にどうやって火を付けるのがいいのかという話になる。
着火コントロール能力高い点火プラグ
さて、火を付ける方法である。一般的にガソリンエンジンの場合は点火プラグを使う。点火プラグとは電極の隙間(ギャップ)に高圧を掛けて稲妻のように火花を飛ばす仕掛けだ。ガソリンエンジンの誕生から今日までずっと使われている理由は二つあって、一つは点火能力が高いこと。もう一つは点火タイミングのコントロール能力が高いことだ。特に後者の理由は大きい。超高速かつ精密にタイミングをとれるから100年以上に渡ってずっと主力であり続けた来たわけだ。 圧縮した混合気に点火するのはピストンが圧縮上死点(※1)に達する前。何故なら点火プラグは言ってみれば焚火に火を付けるマッチと一緒で、可燃物のどこか一か所にしか火を付けることができない。全部に火が回るまでには時間がかかる。だからその分を見込んで早く火を付ける必要があるわけだ。 もちろん個々のエンジンと運転状況によるけれど、点火のタイミングは、圧縮上死点よりだいたい10~20°くらい前になる。ここから燃焼が始まり、圧力は圧縮上死点を過ぎた直後に最大になり、ピストンが下がっていくにつれて少しずつ圧力が下がりながら、下死点前 30°くらいで排気弁が開き始める。つまり混合気に点火してから排気として出て行くまでは160~170°あるわけだ。170°だとすると一周360°の約47%になる。 エンジンが毎分6000回転の時、クランク軸 は1秒間に100回転している。だから1回転は1/100秒。燃焼に使える時間はその47%(※2)だから 47/10,000秒≒0.005秒になる。本当はエンジンの回転数によって点火タイミングは変わる(変える)のだけど、とりあえず無視する。 また点火タイミングの調整は角度1°単位で管理されている。1°は1回転の1/360。1回転が1/100秒になる6000回転時の1°は1/36,000秒である。カメラの高速シャッター以上に高精度で制御する能力があるから点火プラグはスゴイのだ。そして0.005秒というもの凄い短時間燃焼でも、やっぱり混合気はプラグの側から燃え広がっているのだ。するとどうなるか?