ニュースでよく見る「3Dプリンタ」とは?
パソコンからプリンタに印刷したら、何もないところに立体物が出来てしまうという不思議な機械「3Dプリンタ」がにわかに注目を集めています。もともと業務用で自動車部品の試作品の作成などに使われていましたが、ここ最近低価格化が進んでいるためです。家庭に一台あれば、オリジナルのフィギュアなどが簡単に作れそうなのですが、3Dプリンタというのはどういう仕組みの製品なのでしょうか? 3Dプリンタというのは、デジタルデータを元に立体物が作れるプリンタのことを言います。いまのところ特殊な機械であることには違いありませんが、原理的には家庭用の一般的なインクジェットプリンタとあまり変わりません。 一般的なインクジェットプリンタは、インク=顔料を使って絵や写真を印刷し、二次元の作品を作ります。3Dプリンタのインクはちょっと変わっていて、顔料の変わりに、紫外線で固まる樹脂、冷やすと固まる溶けた樹脂、接着剤入りのインクを使って石膏を固めるものなどいくつか種類があります。いずれにしても「固まる」というのがポイントで、固まるからこそ立体物が作れるわけです。 どうやって形が出来て行くのでしょうか? 医療用のCTスキャンを使うと、体を輪切りにした写真が何枚も撮れますね。3Dプリンタの印刷は、CTスキャンとは逆に輪切りを順番に層のように積み重ねて立体物を作っていきます。薄い紙を何十枚も重ねると立体物になりますが、それと同じ仕組みです。これを「積層造形法」と言います。 国内大手の印刷会社である大日本印刷が販売促進やイベント用のキャラクター制作などに使っている3Dプリンタは、石膏を固めるタイプ。フルカラーで出力できるという特徴を持っています。このタイプのプリンタで制作過程を見てみましょう。写真のモデルは同社情報ソリューション事業部の島田幸一さんです。 パソコンから写真を印刷するにはプリンタだけではなくて、デジカメで撮った写真のデータが必要ですね。3Dプリンタも同じで、フィギュアを“印刷”するには、フィギュアのデータが必要です。特殊なカメラで立体化したいモデルをぐるりと360度から撮影して、そのデータをパソコンで処理し、プリンタに出力するだけ。作業の流れそのものは家のパソコンとまったく同じです。 出力が始まると、プリンタが石膏の粉を0.1ミリの厚さに薄く広げます。これがプリンタの紙に相当します。この“紙”の上に接着剤入りのインクで普通のインクジェットプリンタと同じ要領で輪切りデータを印刷します。この時点で人の形の外側だけが着色されています。 これを1時間に2.8センチというスピードで繰り返し積み重ねていきます。印刷したところ以外は固まっていないので、掃除機のような装置で石膏の粉を吸い上げると、接着剤で固くなったモデルの形が浮かび上がるという仕組みです。そして、さらに硬化剤を染み込ませて乾燥させると出来上がり。 誰にでも簡単に作れそうなものですが、印刷と同時に着色できるこのタイプの3Dプリンタは900万円近くと高価です。最近では、10万円台の3Dプリンタも出まわるようになってきましたが、3Dのデータを作るには専用のスキャナーや熟練の技術が必要とハードルが高いのも事実です。 もっと身近に3Dプリンタが普及するためには何が必要なのでしょうか? 同事業部の澤村浩さんはプリンタの低価格化だけでは不十分と言います。「3Dデータが重要です。データがネットで共有され、だれもがそれを組み合わせられるようになると、簡単にオリジナルの制作物も作れるようになってくるでしょう」と話していました。