福原遥のダークヒロインぶりも話題、鈴木亜希乃Pが語る「型にはまったドラマではないところも面白く感じてもらえれば」<マル秘の密子さん>
福原遥が主演するドラマ「マル秘の密子さん」(毎週土曜夜10:00-10:54、日本テレビ系/Hulu・TVerにて配信)。謎多き主人公・本宮密子(福原)による謎めいた物語として始まった同ドラマだが、密子の過去と本当の目的が明らかになり、盛り上がりを見せている。このたび、WEBザテレビジョンでは鈴木亜希乃プロデューサーにインタビューを実施。制作に込めた思い、俳優陣、そして後半の見どころを聞いた。 【写真】福原遥“密子”らの衣装やインテリア、映像美も注目 ■さまざまな要素を詰め込んだ“ノンジャンル”のドラマに挑戦 ――放送スタート後、作品への反響はどのように感じられましたか? 今回、日本のドラマにはあまりないような世界観といいますか、美術セットやキャストの皆さんの衣装、またカメラレンズにもこだわって、本番前のカメラテストの時間を多くとり、俯瞰(ふかん)で撮影したり、シンメトリー(左右対称)に見える手法を行ったり、そういった映像的な面白さみたいなところも追求しているんです。そこにもすごく興味を持ってくださった方が多く、制作的なこだわりもちゃんと響くんだなと感じました。 あと、主演の福原遥さん演じる本宮密子という人物そのものに興味を持っていただけて、面白がってくださっているなと思いました。 ――福原さんのキャラクターだけでなく物語自体も謎に満ちているスタートでしたが、この作品を制作するきっかけは何だったのでしょう。 コロナ禍で外に出られないという状況になり、さまざまな動画配信を通して映像を見るという文化が根付いたように思うんです。海外ドラマを見る機会も増えて、例えば「愛の不時着」のような色々な要素があるものも日本でヒットして、いろんなジャンルがあっても楽しめる土壌ができてきたのかなというところで、ある種、ノンジャンルというかジャンルレスのようなものはどうかと考えました。 謎めいたヒロイン設定は昔からやってみたいと思っていました。そこにお仕事ものや財閥vs庶民、サスペンスなど、いろんな要素を詰め込んで先が気になるというような展開を毎話毎話作っていても、今の日本の視聴者さんならびっくりせずについてきてもらえるのではと。 あと、自分自身、海外ドラマを見て映像がすごく綺麗で圧倒される経験をしたので、そこも大切な要素だと取り入れました。いまはTikTokなどSNSで映像に触れる機会が増えていますし、物語の面白さはもちろんですが、映像にこだわるというのも視聴者の方が求めていることだと思ったんです。 すごく実験的なドラマだなという思いで作っていますし、実際、チャレンジングな企画だなとも思っています。そんな型にはまったドラマではないところを面白く感じてもらえればうれしいです。 ■福原遥の起用がハマり大反響「すごくうれしいです!」 ――先ほどのお話にも出ました、福原さんの役柄への反響も大きいですが、起用された理由は? もともとキャスティングを考えるとき、その人のパブリックイメージとは異なるキャラクターをお願いするのが好きなのですが、今回のドラマ自体チャレンジングなものなので、キャスティングでも型にはまらないで、密子とは正反対のイメージの女優さんがいいなと。 福原さんは殺人鬼っぽいものもやっていらっしゃったりするのですが、直近でいえば朝ドラなどでの一生懸命がんばる女の子みたいな印象が強いですし、バラエティーで見せる素の感じもほんわかしています。そこで密子のようなダークなヒロインがハマれば面白そうだなとキャスティングしました。 最初は、「できるの?」「ハマるの?」というような声があったのですが、「見てみたらめちゃめちゃいい」という反響ばかりをいただくので、そこはすごくうれしいです! ――撮影に入る前など、福原さんと役作りでお話されましたか? お話する時間はたっぷり取りましたね。衣装合わせ前にもお会いしましたし、衣装合わせの時もたくさんお話しました。そのなかで、キャラクターをつかむ助けになったのが、衣装と髪型です。トータルコーディネーター・本宮密子というミステリアスなところがあるキャラクター付けとして、ビンテージクラシックを衣装のテーマに置いていて、個性がある洋服で、色味も使って。またその洋服に合う髪型として、髪を結んだり、おろしたりというアレンジもしながら、いまのご本人は前髪が厚めではないのですが、前髪だけウィッグを使用してキャラクター像ができていきました。 そういった衣装を含めたビジュアルでお芝居の方向性がついたところがあり、いつもより意識して声を低くしたり、どういったしゃべり方にするかということをみんなで話して、そのなかでつかんでもらったという感じです。 ■松雪泰子の起用は「振れ幅のある女優さんにお願いしたかった」 ――その福原さんとタッグを組む松雪泰子さんも最初はえぇーっと驚くような、いつもと違うビジュアルでした。 密子とタッグを組む今井夏は地味なところから密子によって変身させられて、思ってもいなかった九条開発の社長に立候補するという、一番変身しなければいけない役どころです。そういうビフォーアフターが描ける方がいいなと思っていたんですね。松雪さんというと、映画「容疑者Xの献身」(2008年)やドラマ「Mother」(2010年、日本テレビ系)のような幸薄そうな役、逆に映画「デトロイト・メタル・シティ」(2008年)のような強烈な役もできて、あとキャリアウーマンもイメージできますし、その振れ幅のある女優さんというところからお願いしたいなと。 ただ、松雪さんは元々が本当にお美しいので、ビフォーをどうするかというところをすごく話し合って、少し苦労したところでしたね。メガネにするというのはご本人からいただいたアイデアで、あとは、絶妙に丈が足りないチノパンみたいなのはどうかなどと、変身前の姿をかなり悩みながら作っていきました。 ――キャスティングの反響でいえば、桜井日奈子さんも。 桜井さん演じる九条開発の秘書・千秋が、とても視聴者の皆さんに受け入れられていて! 密子とのやりとりが一番面白いくらいに注目していただいています。 桜井さんに関しては、少し前にHuluのドラマ「君と世界が終わる日に」でご一緒しているのですが、コメディエンヌの実力もとても高い方で、いかんなく発揮してほしいなという思いでキャスティングしました。「君と世界が終わる日に」では、今回の脚本を担当されている丑尾健太郎さんもご一緒だったのですが、桜井さんの面白さをすべて出すために千秋という役が生まれたというようなところがあります。 ――なるほど。狙い通りといいますか、キャスティングがぴったりハマっていっているのですね。 それでいうと、夏の長男・智役の清水尋也さんもすごくいいですし、上杉柊平さんも最近は純朴な役が多かったのですが厭味ったらしい九条家の御曹司をファンの方にも喜んでいただいています。九条家長女役の志田彩良さんや夏の長女役の吉柳咲良さんもぴったりです。 ――小柳ルミ子さんもラスボスのようで(笑) ルミ子さんも九条開発の会長役があんなにハマるとは、と。オファーした時、お芝居をすごくやりたいと思っていた時期だったそうで、ご本人もモチベーションが高くて。それもあってラスボス感があるといいますか(笑)、あまりせりふがなくても、いるだけですごいみたいな感じになりましたね。 ■後半の見どころはサスペンス+恋愛!? ――物語では、4話以降、密子の謎の部分に迫ってガラッと雰囲気が変わったように思いました。後半の見どころは? 作品としてガラッと変わるというのが今回やりたかった話の構成でもあるので、全話を入口、中盤、出口みたいに3ブロックぐらいに分けた展開にしたいなと思っていました。密子でいえば3話までは謎めいた女性というだけでしたが、彼女の目的が分かったところから、だんだん彼女の人間らしさが出てきたり、葛藤したりして、彼女の内面が暴かれていくのが、注目ポイントかなと思います。 ――後半はサスペンス要素をいっそう楽しめる? そうですね、密子が追う事件の真犯人は誰だというような考察要素も増えていきます。 かわらしい世界観の中でサスペンスをしたいというのがそもそものイメージであったんです。柔らかいものの中でトゲトゲしいことをする、みたいな。きれいなものほどトゲがあるじゃないですけれど、それによって怖く見える効果を狙えればと。美術セットや衣装はかわいくして、中身はサスペンス含めてけっこうドロドロという、物語と映像でギャップを作ることもチャレンジしたかったことです。 あと、まさかすぎるんですけど(笑)、恋愛軸もけっこう入ってくるんです。3話で少し匂わせたところがありましたが、後半盛り上げていく予定です。今井家vs九条家の争いを含めて人間関係がどんどん広がっていきますので、楽しんでいただきたいです。 取材・文=神野栄子