【医療制度改革】診療報酬の「出来高払い」や患者の「フリーアクセス」などの根本的な見直しを……専門家が指摘
政策アナリストの石川和男が8月3日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。6月に行われた診療報酬改定の中身や今後の医療制度のあり方について、専門家と議論した。
6月1日、医療機関に支払われる診療報酬が改定され、初診料や再診料などが引き上げられた。診療報酬は2年に1度改定されていて、今回の増額分は医療従事者の賃上げにあてられることになっている。一方、今年の政府の「骨太の方針」では少子高齢化が進むなか、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、医療・介護分野における給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図る考えが打ち出されている。 今回の診療報酬改定や今後の医療制度のあり方について、ゲスト出演した構想日本代表の加藤秀樹氏は、医療・介護分野における人材確保のための賃金アップには理解を示しつつ「報酬の改定は微調整」だと指摘。「病気の質も、医療の中身も、働き方も変わり、高齢者が増えてきているなど色んなものが変わってきている中で、医療の仕組みそのものを根底から変えないといけない」と言及した。 加藤氏は「日本の医療制度は世界的にみて特殊な部分が多い」として、患者が自由に医療機関を選べる「フリーアクセス」の仕組みや診療報酬が「出来高払い」である点に着目。日本人の病院選びを「ブランド志向」だと述べ、患者が一部の有名大学病院などに集中する現状を挙げ、諸外国のように地域ごとに決められた「ホームドクター(かかりつけ医)」の問診を経て、適切な医療機関へ患者を送るシステムなどの導入を訴えた。 また、日本の診療報酬制度は「出来高払い」で「検査、診察の度に点数が加算され支払いが増え、医者の収入が増える」と指摘。例えば欧州のホームドクターは、出来高払いとあわせて、担当する地域の人口に応じて予め支払われる定額の報酬が「地域割」で決められていると紹介。過剰な診察や検査を防ぐ報酬制度のあり方も検討すべきだと述べた。 さらに、日本と諸外国では医師を育てる教育段階から制度が異なるとも述べ「例えばイギリスだと、大学で専門医のコースと問診医のコースが途中から違う」と語った。 石川が今後の医療制度改革について「いきなり大病院に行くのは、もうやめるというぐらいの大原則を立てないと」と述べると、加藤氏は「1次医療、2次医療、3次医療という区分けが本来あったはずが、今はぐちゃぐちゃになっている。それを整理した方が、高度な医療を必要とする人にとっても、あるいは普段のちょっと診てもらいたいなという人にとっても、時間短縮や余計な医療費がかからなくて済むメリットがあるはず。欧州などの整理された医療制度には大いに学ぶところがある」と応じた。