安価で手軽な「プチ整形」の後遺症に悩まされる人が急増中、注入系の施術に潜む"怖い落とし穴"を日本人医師が解説
目の下の涙袋が大きく腫れ、デメキンのような形状になってしまった女性の写真とコメントがSNSで話題になったことがあった。ぷくっとした涙袋を作るために受けたヒアルロン酸注入の施術後に起きてしまったトラブルだという。 【写真】整形の沼にハマってしまった...!? 美容整形を受けたことを認めた有名セレブ35人 「涙袋を膨らませるために注入したヒアルロン酸の量が多かったり、注入したヒアルロン酸の粘度が高かったりすると、こういった症状が起こることがあります」というのは、美容外科医で美容外科手術の後遺症に苦しむ人を治療する「美容外科後遺症診療医」の資格を持つ朝日林太郎医師だ。
美容医療が身近になってきた一方で、美容後遺症外来の患者数が増加
美容外科後遺症に関してはまだまだ受け付ける医療機関は少ない。実際に後遺症を訴える人の数は増えているのだろうか。 「美容医療を受ける人が増えていること、またこういった外来があるという情報が浸透してきたこともあると思いますが、私が美容後遺症外来に携わり始めた2020年では1日の初診数が5人前後でしたが、現在は20人ほどに増加しています。相談内容はさまざまですが、日本では非外科的治療、いわゆる注入系と呼ばれるようなヒアルロン酸注射やボツリヌス療法、脂肪注入、PRP治療、レーザー治療など、メスを用いない施術を求める人が多く、痛みが引かない、腫れが治らない、異物感があるなどの症状を訴える人が多い傾向にあります」(朝日医師) 確かにメスを用いる施術よりも、注入系の美容施術は手軽な印象はある。しかし、メスを使用しないから安全というわけではない。 「注入したヒアルロン酸や脂肪、PRPが最終的にどのように吸収されていくか、これを予想するのはとても難しい部分があります。しこりや膨らみなどの違和感が残ることもあります。また、『持ちがいい』『長期間持続できる』といった謳い文句で使われていたのが『アクアミド』と呼ばれるヒアルロン酸とはまったく異なる非吸収性の注入剤です。持ちがいいと聞くとよいものに感じてしまう人が多いですが、言い換えれば肌に残るということ。しこりのように硬く残ってしまうケースもあります」(朝日医師) アクアミドなどの非吸収系注入剤の危険性は、かなり前から指摘されているが、まだ使用しているクリニックもあるという。しかも、呼び名はクリニックによって異なるため、実際にはアクアミドを使用していても、ユーザー側はわからないことも多いというのだ。 美容施術を受ける前に、どうしたらそういったリスクを見分けられるのだろうか。 「非吸収性は受けないと考えたほうがいいでしょう。カウンセリングで『持ちがいい』と言われた場合には、使用される注入剤をきちんと聞いてみてください。疑問や不安があったら躊躇せず医師に尋ねてみる。医師による説明が納得できるものかどうかは、ひとつの目安になると思います。そして注入系=リスクが少ないという考えは持たないほうがいいでしょう」(朝日医師) 比較的安価でダウンタイムも少ないといわれる注入系も、信頼できるドクターのもとできちんと説明を受けることを忘れずに。
From Harper's BAZAAR July 2024 Issue