錦織圭が「ギリギリ楽しめないくらいのレベル」と総括した復帰戦。手応えと共に「1試合を通して90点の試合を…」と課題も<SMASH>
試合後に錦織は、「試合になると、(練習とは)違うだろうなとは思っていた」と、穏やかな口調で思いを口にする。 「硬くなるだろうし、一瞬でも気を抜いたりリズムが崩れたら、悪くなるだろうなという想定はしながら、試合には入りました」 比較的早いこのサーフェスで、相手が強打一発で決めてくるタイプであることも、リズムがつかみにくかった要因。懸案のヒザの状態は「だいぶ良かった」と言うものの、「やっぱりまだかばっていて、動きが遅かったりもする」とも明かす。 「なかなかラリーもさてくれなかったので、もうちょっとストローカーと試合ができたら、リズムをつかめたんでしょうけど……」 そんな小さな悔いを口にしつつも、「でも強かったですね、今日の相手は」と、素直に相手のプレーを称えた。 約8カ月ぶりとなる今回の実戦から、持ち帰った手応えと課題とは――? その問いに錦織は、さほど間を開けることなく、確かな口調でこう応じた。 「久しぶりに戻ってきた時、やっぱり一番起こるのが、試合全体を通して70%くらいは良いプレーができていても、1つ2つ、悪いゲームが出てきてしまう。自分のサービスゲームで特に1~2回エラーが出て、簡単にゲームを渡してしまう時間帯が今日も少しあったかなと。やっぱり1試合を通して、90点の試合をできるようにならないといけない」 まずは「課題」に言及すると、「まあそれに関しては、少し時間がかかるし……」と自分に言い聞かすようにつぶやき、こう続けた。 「でもストロークは、意外と良かったかなと思ってます。もうちょっと空回りする感じも想定はしていたので、その割には悪くはなかった。でもさっきも言ったように、フットワークだったり、細かいボレーだったり、ストロークのアンフォーストエラーだったり……、直さないといけないところは、もちろんたくさんありました」 それら全てをひっくるめ「ギリギリ、楽しめないくらいのレベル」と、彼は試合を総括した。 少しの落胆も、ある種の手応えも想定内――。そんな、どこか達観したような風情もたたえ、北米のヒューストン、そして欧州のバルセロナ、マドリードと続く「好きなクレーコート」へと向かっていく。 現地取材・文●内田暁