【カスハラ対策】社会全体で機運醸成を(9月21日)
顧客や取引先から威圧的な言動や理不尽な要求を受ける迷惑行為「カスタマーハラスメント」(カスハラ)が、社会問題になっている。政府は、従業員を保護する対策を企業に義務付ける改正労働施策総合推進法案を来年の通常国会に提出する見通しだ。県内の自治体や企業は、職員や社員をハラスメントから守る対策を急ぐ必要がある。 自治体をはじめ小売りやサービス業界などで、長時間の電話対応を強要されたり、不当なクレームを受けたりして、職員や従業員が心身に不調を来す事例が出ている。交流サイト(SNS)で個人情報が拡散され、人格を否定するような書き込みが投稿されるなど、ここ数年でカスハラ被害は深刻化しているとの指摘もある。 東京商工リサーチ郡山支店が県内企業95社を調べたところ、直近1年間にカスハラを受けた企業は18社に上った。「口調が攻撃的・威圧的だった」「大きな声を上げられた」「長時間にわたる対応を余儀なくされた」などの声が寄せられた。応対者が休職や退職に追い込まれる深刻な事態も起きている中、7割を超える企業が「対策をしていない」と回答していた。
「顧客第一」は営業活動などでの基本かもしれないが、社会通念上受け入れられないハラスメント行為は人権侵害につながる。理不尽な要求があれば、速やかに警察に通報するなど毅然[きぜん]とした対応が求められる。 厚生労働省は一昨年、事例ごとの対策を記したマニュアルを作成し、従業員の安全確保や精神面への配慮を企業に求めた。推進法の改正で対策を強化するのに先立ち、東京都は18日、条例案を提出した。 県内自治体では、伊達市が先月、職員の名札から顔写真をなくし、名前は名字だけに切り替えた。福島、いわき、二本松、南相馬各市なども同様の取り組みを始めている。民間企業も法制化を待たず、対応マニュアルの作成や相談体制の整備を積極的に進めてほしい。 誰もが生き生きとやりがいを持って働く職場環境を実現するには、カスハラ根絶に向けた社会全体の機運醸成が欠かせない。学校教育の現場でも、モラルをわきまえた言動を常に心がける大切さを伝えていきたい。 (渡部純)